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いそいそ (6)
ふらふら
いそいそ
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
かりかり
おたおた
どきどき
きらきら
ぽつぽつ
とんとん
こつこつ
わいわい
いらいら
ずきずき
ひしひし
わくわく
ゆるゆる
 「うん。琉球古典の教室に通っている」
 「琉球古典って、難しいんでしょう?」

 伝統的な三線音楽のジャンルは、古典と民謡に分けられる。と、これまた旅行ガイドブックで読んだ。古典=琉球古典は、最も伝統を重んじるジャンルで、独学は無理だって書いてあったっけ。ボクはそれを読んで、琉球古典は自分の手の届かない、どこか遠くの世界の音楽のように思っていた。

 「でもないよ」

 うまい人は、難しいとは言わないんだろうな。

 「じゃあ、ボクでもできますか」

 ちょっと意地悪な質問をしてみたつもりだった。「いやあ、だれでもできるってわけじゃないんだよ」と言うかと思えば、

 「絶対にできる」

 ものすごい自信だ。さらに、こう続けた。

琉球古典は、ものすごく奥深い。だからとっつきにくいと思っている人も多い。それが間違い」
 「間違い?奥深くないってことですか」
いやいや。古典は、奥深い。奥深いからこそ、だれでも楽しめるんだ。おもしろいぜ」

 ドクの説明では、琉球古典には初心者に楽しめる曲から超難曲まで、ありとあらゆる曲があるんだそうな。そして、初心者に楽しめる曲も、歌い込むことで曲の深いところまで理解できるようになる。たくさんの曲が揃っているという横への広がりと同時に、一つの曲をとことん突き詰めていく深さもある。それが琉球古典の奥深さなんだって。でも、本当に初心者でも楽しめるのだろうか。

 「初心者の曲って、どんなのですか?」
だいたい『安波節』ってことになってるな。でも、もう三線を弾けるんだろ?だったら『かぎやで風』がお勧めだね」

 お安い『安波節』よりも、こちらの『かぎやで風』をお求めになった方が、あとあと後悔しませんよ。ってとこかな。セールストークは続く。

『かぎやで風』は、沖縄の人ならだれでも知ってる。民謡の人だって演奏できる人は多い。だから、これを知っていると、いろんな人と一緒に楽しめるんだ。それにね」

 そこで、ドクは少し遠くを見るような目になった。

 「なんてったって、『かぎやで風』は、美しい」
 「美しい?」
そう。すばらしい曲だよ。沖縄県民から愛され続けてきたのは、美しいからなのさ」

 ボクは、ドクの視線の先を見てみた。「夢に乾杯」と書かれたオリジナルラベルだった。そこへ店主が。

 「ドク、美しいって、口で言うだけじゃあ、だめでしょ」

 ボクもお願いした。

 「そう、そうですよ。是非聞かせてください」


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