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いそいそ (3)
ふらふら
いそいそ
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
かりかり
おたおた
どきどき
きらきら
ぽつぽつ
とんとん
こつこつ
わいわい
いらいら
ずきずき
ひしひし
わくわく
ゆるゆる
 「あの、じゃあ、ちょっとやってみますね」

 三線ケースを膝の上に乗せたのだけれど、店主が店のを使ってもいいと言ってくれたので、ケースを隣の席に戻して、壁に掛かっている三線を借りることにした。うん。調弦もできているみたい。
 カップルの方をちらりと見た。女性が男性の耳元で何か囁いた。「さんしん」という言葉だけ聞き取れた。ボクは、カウンターに向かって『唐船どーいー』を弾いた。できるところまでやった。まだ一番の真ん中あたりまでしかできないから、締まりのない演奏になってしまった。

 「ここまでなんですけれど」

 カップルが拍手をしてくれた。ふりむいて笑顔でおじぎをしたけれど、本当は嬉しくなかった。

できているんじゃないの。工工四通りに、きちんと弾いているみたいだね」
 「店主、ちょっとお手本をお願いしますよ」

 店主はこちら側へ出てきて三線を受け取った。ボクとカップルの席の間に立って、少し調弦を直してから演奏を始めた。二番からは、カップルの方を向いた。気持ちの良いリズムだ。女性の方が、両手を頭の上でひらひらと動かしている。体が揺れている。座ったままのカチャーシーだ。男性は体でリズムをとりながら手拍子を打つ。三番まで歌った。丁寧にお辞儀をしてから、こちらへ戻ってくる。かっこいいなあ。

 「ね、こんな感じでいいと思うよ」

 店主は、三線を壁に戻して、またカウンターの中へと戻った。

 「すごいですね。工工四を全部覚えているんですね」
 「ちがうちがう。工工四の通りじゃないよ」
 「じゃあ、CDの通りに・・・」
まさか。それほど器用じゃない。歌いやすいように弾いているだけ」
 「歌いやすいように?」

 店主が解説を始めてくれた。沖縄民謡というのは、演奏者によって三線の弾き方が違うんだそうな。歌詞まで違っていることもあるんだって。驚きだ。何を手本にしていいのかわからないじゃないか。と思ったんだけど、店主の考え方は、だからこそ楽しいし、だからこそ沖縄の民謡は民謡として生きているのだそうだ。よくわからないけれど、そんな気もする。


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