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糸巻き U 〜三線仲間が集まれば〜

この物語はフィクションです。
文中に登場する名称など、実在のものとは無関係です。
どんなに似ている人がいても、絶対に関係ありませんから。

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誘ってくれてありがとう。でも、ちょっと都合が・・・先約があって。ごめんね」

 クリスマスイブに、レストランで食事をしようと誘ったら、こんな返事だった。少し言いにくそうだったけれど「先約があって」の所は嬉しそうに聞こえたよ。きっと、嬉しい先約なんだろうね。
 別の日に誘おうかと思ったけれど、「ごめんね」という言葉の意味くらい、ボクにだってわかる。
 河川敷で出会って、「三線のおかげで彼女ができた」と思った。でも、違っていた。彼女が興味をもったのは三線だった。ボクじゃなかった。ボクの下手な歌で彼女ができるほど、世の中は甘くないってわけだ。

 その一週間後、宝くじは当たっていなかった。当たっていたら、クリスマスの辛い思い出も消し去ることができただろうに。

 でも、考え方を変えたんだ。もともと、彼女はいなかった。宝くじだって、大金をつぎ込んだわけじゃない。 ボクの生活は、前と何も変わっちゃいない。悪くなったわけじゃあないんだ。

 そう、三線の話だ。
 結婚披露パーティーは素晴らしい経験だった。一緒に歌ってくれたおばあさん。体を包み込むような拍手。みんなで踊ったカチャーシー。あの感動のおかげで、オジイがいなくなった後も三線の練習を続けていたんだ。 いろんな経験が、ボクの心の中の三線練習へのエネルギーになっていたんだ。
 だけど、そのエネルギーも徐々に薄れてしまうものなんだね。クリスマスのあの電話の後、年末までは忙しくてほとんど練習できなかった。いや、正直に言うよ。ケースを開けることすらなかった。

 年が明けてからも、三線には触っていなかった。でも、そんなボクの気持ちを、三百六十度変えてくれたのは一枚の名刺だったんだ。

 あれ?三百六十度だと、元に戻っちゃうのか?

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