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いそいそ (4)
ふらふら
いそいそ
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
かりかり
おたおた
どきどき
きらきら
ぽつぽつ
とんとん
こつこつ
わいわい
いらいら
ずきずき
ひしひし
わくわく
ゆるゆる
違いを楽しめる人はいいですけれど、ボクみたいな初心者はどうすればよいのかわからなくて」
とにかく弾いて歌ってしまうことだよ。工工四とかCDを参考にして、でも、あまりこだわらないでね。とにかく最後まで歌ってしまう。その後で修正することもできるんだし」

 本当かな。あのスピードで「とにかく最後まで」ってことすら難しいと思うんだけれど。

 「何のために早弾きをやるのか」

 そう言って、ボクの顔を見ている店主。答えを待っている。何のために?そんなこと考えていないよ。早弾きがやりたいっていうだけで。答えられないボクに、店主は続けた。

早弾きができるようになったとしよう。それをどこで演奏する?」

 それも考えていない。

 「じゃあ、早弾きを演奏しているとき、聞いている人は?」
 「そりゃあ、踊ってくれたら最高ですよね」
 「それそれ。そこなんだよ、早弾きで大切なことは」

 早弾きには目的がある。踊ってもらうこと。踊らせること。つまり、踊りのためのスピードなんだ。だから、早ければいいってもんじゃあない。踊りやすい速さがいい。競争でもなければ、速さ自慢のためでもないんだから。
 なんて言われたけれど、これって、早く弾ける人が言う言葉なんだと思う。遅すぎちゃあ、早弾きじゃないもの。でも、とにかく、あまり早く弾こうと焦らなくてもいいってことはわかった。落ち着いていこう。そう、歌と一緒に覚えていこう。

 ビールのグラスに手を伸ばしたとき、その向こう側にある「本日のおすすめ」と書かれたメニューが目に入っ た。そうだ、仕事が終わってからまだ何も食べていなかった。

 「店主、もう一つお願いがあるんですけれど」
 「何?」
 「ミミガーをください」
 「はい。かしこまりました」

 旅行ガイドブックで見たことがある。ミミガーは、豚の耳を使った沖縄の料理だ。と説明すると気味悪いかもしれないけれど、さっぱりとしたとても上品な味だ、と書いてあった。はずだ。
 出てきたミミガーは、小さなお皿にこんもりと盛られていた。酢みそのようなものでキュウリと一緒に和えてあった。少し甘めの味付けだけれど、ビールに合うね。
 ミミガーが半分くらいになったとき、店主にもう一つ質問をしなければならなかったことを思い出した。「S.W.L.」は何の略なのか。
 ボクは口の中に残ったミミガーをビールで流し込んで、店主に声を掛けようとした。そのとき、カランカランと鳴って男性客が一人入ってきた。


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