わくわく (1) | |||||||||||||||||||||||||||||
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南星園の駐車場は広いけれど、車は少ない。ボクたち「かぎすま」のメンバーの車以外には、マイクロバスと乗用車が二台だけだった。そこへ、もう一台のマイクロバスがやってきた。建物の入り口で止まって、人が降りてくる。デイサービスのみなさんなのだろう。職員に体を支えてもらって降りてくる人もいれば、元気に手を振って建物の中へ入っていく人もいる。 人の流れが落ち着いたところで、ボクたちも中へはいる。自分の三線と、タカさんが持ってきてくれた譜面台などを手分けして持った。控え室は二階の談話室だ。ソファーが二つと大きなテーブルがあった。三線を並べるのにちょうどいい。 タカさんは、アキちゃんと一緒にマイクの準備に舞台へ行った。店主も後を追った。ボクとドクは、みんなの三線を準備した。『花』のために調弦をしておくんだ。トヨさんが部屋の隅っこで三線を抱えて音を出さずに右手を動かしている。緊張しているなあ。 やがて、タカさんだけが戻ってきた。店主とアキちゃんは、園長室へ挨拶にいっているらしい。本番まで落ち着かないけれど、やることはもうない。と、ドアをノックする音だ。ドアを開けたのは、南星園の薄いブルーの制服を着た若い男性だ。その後ろから、年配の女性と、店主とアキちゃんが入ってきた。店主が紹介した。 「こちらが、園長さん。これが、私たちのグループです」 「今日は、よろしくお願いします」 全員が立ってお辞儀をした。園長さんの話では、入所者の中には沖縄出身者が五名いらっしゃるそうだ。その中の一人は、トヨさんの夫に違いない。 園長さんは、入所者全員が楽しみにしていますという言葉を残して、部屋を出て行った。時計を見ると、本番まであと二十分だ。ボクは、アキちゃんに尋ねた。
会場のマイクは館内放送につながっていて、ボクたちの演奏は会場にいない人にも聞こえるようになっているんだ。 「じゃあ、トヨさんのおじいさんは」
よかった。トヨさんの演奏する姿も見てもらえるんだ。ボクは少し安心した。 本番五分前。 「じゃあ、行こうか」 「よっしゃあ!」 ドクが両手で握り拳を作って手前に引いた。トヨさんは、みんなが立ち上がるのを見てから立ち上がった。 (2)へ |