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どきどき (1)
ふらふら
いそいそ
かりかり
おたおた
どきどき
(1)
(2)
(3)
(4)
きらきら
ぽつぽつ
とんとん
こつこつ
わいわい
いらいら
ずきずき
ひしひし
わくわく
ゆるゆる
 今週も仕事が忙しかった。年度末が近いこともあって、営業に出るよりも、社内で伝票相手に格闘することの方が多かった。残業ばかりだ。

 金曜日。今日も残業。最後の書類を片づけて会社を出たとき、なんだか人恋しくなった。三線が弾きたくなった。家に帰って弾くのもいいけれど、金曜日の夜に一人で三線ってのも寂しいよね。ボクは、会社から直接S.W.L.へ向かった。店主と一緒に三線弾いて遊べるかも。そう思うと、足が勝手に急いでしまう。そうだ、今日こそS.W.L.の意味を聞かなくちゃ。

 カランカランと中に入る。テーブル席はすべて埋まっていた。カウンターにも三名のお客さんが座っている。 カウンターの向こう側では、店主が忙しそうに働いている。金曜日だね。
 店主は忙しすぎて、ボクが入ってきたことに気づかないようだ。この様子だと、店主と一緒に三線弾いて遊ぶなんて、とても無理だな。ま、ビールでも飲ませてもらおう。暇になったら相手をしてくれるかも。
 入口に一番近いカウンター席に座ろうとしたとき、店主がボクに気づいた。

 「おお!いいところへ来てくれたよ。ちょっとちょっと」

 なぜか小声になって、手招きしている。まさか、忙しいから店の手伝いをしてくれ、なんて言うんじゃないだろうね。そういうアルバイトの経験はありませんよ。

 「はい、何です?」

 座ろうとした席にカバンを置いて、話を聞こうとしたけれど店主が遠い。ボクはまたカバンを持って、一番奧のカウンター席へ行った。ここなら店主と向かい合わせだ。ボクはもう一度呼びかけた。

 「何ですか?」

 店主は後ろを向いて鍋の火を小さくしてから、こちらへ向き直り、カウンターから首を伸ばしてボクに耳打ちする。

 「三線弾いてよ」
 「はあ?」

 店主は早口で事情を説明した。この店に来るお客さんの中には、店主の三線を楽しみにしている人も少なくないらしい。でも、今日のこの混雑では、店主に三線を弾く余裕はない。そこで、ボクに演奏しろという話だ。

 「えー!そんな・・・」
何でもいいんだ。生の三線の音が聞こえるだけで満足なんだよ」

 そう言って、背中を向けて鍋の中をかき混ぜ、今度はまな板の前に移動して何かを刻み始めた。ボクは立ち上がって、カウンターの中に首を突っ込むようにして、店主の背中に返事をした。

 「そんなの、無理ですよ」

 後ろを向いたまま返事が来た。

別にライブをやってくれって言ってるんじゃない。BGMみたいなもんだから」
 「CDがあるでしょ」
 「だから、生の音とは違うんだってば」
 「三線だけでいいんですか」

 ここだけ、手を休めてこちらを向いた。

そんなはずないだろう。三線を弾くってことは、歌うってことだから」
 「そうですよね」

 オジイみたいなこと言われた。


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