わいわい (1) | |||||||||||||||||||||||||||
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そして、一週間後の日曜日。今日を含めて、発表会までに三回日曜日がある。まだ三回もある。あと三回しかない。みんなはどう思っているのだろう。 三時五分前にはS.W.L.のドアの前に立っていた。店内からは、いろんな歌声が混ざり合って聞こえてくる。ドアを開けると、みんなそれぞれ別々の方向を向いて歌っている。いや、タカさんとナンちゃんだけは、並んでいた。好き勝手に練習をやるというのは、この会の方針だけれど、今日のみんなは少し違っている。リラックスムードじゃあない。打ち込んでいるっていう感じなんだ。一人を除いて。 「もー、遅いじゃないですかー」 アキちゃんだ。アキちゃんだけは、練習に打ち込むことができず、イライラしながらボクを待っていたようだ。 「みなさん、早いですね」 と言いながら思い出した。アキちゃんとボクが組んで歌うことになっていたんだ。トヨさんとの練習と『唐船どーいー』のことで頭がいっぱいだった。 「ずーっと待っていたんですよー」 鼻の下が少し伸びそうになったけれど、勘違いしてはいけないよね。 「どうもすみません。あれ?トヨさんは」
土曜日の練習は、最初から最後まで『とうがにあやぐ』だけだから、他のことを考える余裕がない。アキちゃんの向かい側に座って、三線を用意しながら会話を続ける。 「トヨおばあ、うまくなってます?」
「アハハ」 笑うしかない。
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