ひしひし (1) | |||||||||||||||||||||||||||||||
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いよいよ一週間後に迫った。 「じゃあ、今日も通してやってみよう」 テーブルと椅子を店の隅に押しやって、広くなった場所が舞台だ。そこに工工四を置くスタンドのようなものが二つ置かれている。タカさんがどこかから借りてきたそうだ。「譜面台」と呼んでいた。 まず、七名全員が横一列に並ぶ。立つ位置は先週決めた。『花』を演奏したら、店主が挨拶と紹介をする。それが終わると、店主を舞台に残して全員が引っ込む。引っ込むといっても、南星園の舞台は本物の舞台のように、幕があるわけじゃないらしい。だから、出番をまっている間、舞台の隅っこが待機場所になる。お客さんから見えるんだそうな。アキちゃんが待機場所を指さして大きな声で言った。
ボクは、南星園にはまだ一度も行ったことがないけれど、アキちゃんは何度か足を運んで打ち合わせをしてくれているんだ。舞台の様子や、マイクのことや、控え室のことなど、すべてアキちゃんがきちんと確認してくれ ていた。これも、ライブ慣れしているってことなのだろう。こういう発表会ってのは、演奏することだけを考えていればよいのではなくて、細かな打ち合わせが必要になるんだね。 段取り通り、店主だけが舞台中央に残っている。 「ここで歌の説明をして・・・」 そう言って、三線を弾き始めた。歌の説明は省略して、先に進むというのがこれまでの練習方法だ。この日はドクがストップをかけた。
ドクがニヤリとた。店主は三線を止めた。 「大丈夫だよ。本番にはきちんとやるから」
店主は、鼻の頭を二度撫でてから、
みんながまた並んだ。
みんなが顔を見合わせた。 「忘れてたんだよね。グループ名が決まっていなかった」 「本当だ。アハハハ」 アキちゃんが大笑いした。みんなもつられて笑っているけれど、やっぱり名前は必要でしょう。店主がみんなに意見を求めた。 (2)へ |