ふらふら (7) | ||||||||||||||||||||||||||||
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一人になって、工工四を見ながら弾いてみた。工工四をゆっくりと追いかけてみる。最初は、リズムにこだわらないようにした。今までに見たことのある文字ばかりだ。こうして音を出すだけなら、三線をやっている人ならだれでもできるだろうな。これを、あのリズムに乗せればいいわけだ。いけるかも。 けっこういける。そう思ったときだ。自分がどこを演奏しているのかわからなくなった。見失ったという感じだ。もう一度最初から。 二度、三度と工工四の通りに演奏して、少し慣れてきた。慣れてきたので、できるだけあの「パッカパッカ」というリズムを表そうとしているんだけれど、工工四には、どの音が「パッ」で、どれが「カ」なのかが書かれていない。工工四のそれぞれの行の一番上が「パッ」だということはわかるんだけれど、行の真ん中当たりにくると、どっちだったかわからなくなるんだ。それで、リズムが裏返ってしまうことがある。間違えたと気づいて、やり直そうとしても、途中からだといったい歌のどのあたりを弾いているのかがわからなくなる。はあ、やっぱり早弾きの道は厳しいぞ。 「では、そろそろ」 という店主の声で、われに返った。終了時間だった。
ボクは、店内を見回した。 「掲示板って、外にあるんですか?」
なるほど、そういえば、名刺にURLが書かれてあったっけ。 そんなわけで、ボクは店主から工工四を借りて、店を出た。 家に帰ったボクは、手持ちのCDを見てみた。あった。『唐船どーいー』が。さっそくかけてみる。うん。店主が弾いてくれた曲に違いない。少し雰囲気が違って聞こえるのは個性ってことか。いや、CDは三線も二丁か三丁で演奏しているし、かけ声や太鼓の音でにぎやかなんだ。店主は一人で三線一本。考えてみると、一人でやりきるってのはすごいことなのかもしれないな。 それにしても、「S.W.L.」て何の略なんだろう。 いそいそへ→ |