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わくわく (3)
ふらふら
いそいそ
かりかり
おたおた
どきどき
きらきら
ぽつぽつ
とんとん
こつこつ
わいわい
いらいら
ずきずき
ひしひし
わくわく
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
ゆるゆる
 メンバー紹介も、お年寄りの小さな拍手と職員のみなさんのめいっぱいの拍手で進んだ。トヨさんが紹介されたとき、ベッドのおじいさんを見たけれど、特に反応はなかった。聞こえているのだろうか。

 紹介が終わり、ボクは、待機場所に座った。店主の歌が始まった。

 相変わらず、小さな手拍子だ。でも、この時気づいたんだ。手拍子を打っていない人も、体が動いている。膝の上に置かれた右手が歌に合わせて動いていたり、歌に合わせて体を揺らす人がいたり。手拍子だけでなくて、 いろんな表現があるんだな。
 店主の歌は『かいされー』になった。そのときだ。ベッドのお年寄りが一人、体をこちらに向けた。歌を聴きながら、職員に何かを耳打ちした。歌が終わると、動かない手で一生懸命拍手をしてくれた。間違いなく、店主の歌は届いているんだ。そして、車イスの方からは、また「あーー」と聞こえた。この人、歌が嫌いなのかと思ったけれど、そうでもないらしい。顔は楽しそうなんだ。

 ボクとアキちゃんの番だ。店主と入れ替わりに舞台に立つ。職員のみなさんも、少しなれてきたみたいで、無理な拍手がなくなった。その方がいい。と思ったら、客席から大きな声が聞こえた。

 「おじょーちゃん。かわいいねー」

 白髪でおでこの広い、あのおじいさんだ。アキちゃん、さぞ困っているだろうと思ったら、笑顔で手を振っている。さすが、舞台慣れしている。

ボクたちが最初に歌うのは『てぃんさぐぬ花』です。沖縄の言葉で、ホウセンカの意味です。昔は、花びらで、爪に色を付けて遊んだそうです。ボクもやってみようかとおもったんですけれど、女の子の遊びなんですって」

 と、ここで笑ってもらえるかとおもったんだけれど、甘かった。
 歌が始まる。と、椅子席の一番前の人が、うとうとし始めた。なんてこったい。人が一生懸命歌っているのに。でも、まあ、他の人は聞いてくれているんだし。と思ったら、その後ろの人もうとうと。ああ、やる気なくなっちゃうなあ。でも、歌い終わったときに思ったんだ。歌を聞いて眠っている。これって、気持ちいい歌ってことだよね。少なくとも、うるさくて寝ていられない歌ではないってことだ。きっとそうだ。どうぞ、くつろいでください。

次は『国頭じんとーよー』です。女と男で、掛け合いでうたいます。恋のうたなんですよー。でも、私たち二人は、なーんにも関係ありませんからねー」

 お、少し笑いがとれた。なるほど、恋の話題は、年齢に関係ないんだね。
 『国頭じんとーよー』は軽快だ。手拍子も少し大きくなったような気がする。『かいされー』の時に体をこちらへ向けていていた人が、またこっちを向いて音の聞こえない手拍子をしてくれている。そして、車イスの方からは、また「あーー」という大きな声が聞こえた。そうか。この声って、気分のいい時に出る声なんじゃないかな。さっきも、その前も、歌の一番聞かせどころで声がした。歌の好きな人に違いない。きっと喜んでくれているんだ。


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