こつこつ (3) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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さすがはタカさん。全体のことをしっかり考えているんだな。 「みんなが歌える歌ねえ。何がいいかな」 店主が投げかけた。みんなが下を向いたり天井を見たりしながら考えているときに、ナンちゃんが皆の顔を見回しながらぼそりと言った。 「『十九の春』なら、歌えると思いますよ」
店主は賛成のようだが、ドクは疑っているようだ。 「『十九の春』って、そんなに有名なのか?」 続いてアキちゃん。
店主は、二人の顔を見てからトヨさんに声をかけた。 「知ってますよね。『十九の春』」 「どんな歌?」 店主は一瞬「当てが外れた」って顔をした。でも、すぐに少し微笑んでから歌い始めた。 「わたしーがー、あなたーにー、ほれたーのはー」 トヨさんが続きを歌った。 「ちょーどー、十九のー、春でーしたー」 「ほらね」 店主が得意げだ。アイデアを出したのはナンちゃんなんだけど。
ナンちゃんが小さな声で、 「うちのじいちゃんも好きなんですよ。時々歌ってます」 今日のナンちゃんは、けっこうしゃべってる。
おお、ドク、いいこと言う。 「じゃあ、歌詞はアキちゃんが用意してくれる?」 「はーい。当日までに書いておきまーす。大きな文字でね」
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