こつこつ (2) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
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「演奏時間は、全部で一時間くらいってことでいいよね」
ライブって、だいたい二時間前後が普通だと思うけれど、タカさんの言うように、あまり長いのはお年寄りには辛いだろうな。かといって、あまりにも短すぎるのもつまらないだろうし。ってことで、一時間というのは適当な長さなのだろう。店主はさらに話を進めた。 「一曲目は何がいいかな」 ドクが口を開こうとした。店主が遮るように言った。 「かぎやで風以外で」 タカさんが口を開いた。
アキちゃんに見つめられて、ドクがしぶしぶ言った。 「気は進まないが、どうしてもと言うのならね」 そうか。『島唄』なら全員演奏できるんだね。え?ちょっと、ボクは演奏したことないですけど。
だから、できないんだってば。 「そうですよねー。顔見せって感じですねー」 ボクできません。とは、言いにくい雰囲気だ。 「あ!」 店主がオクターブ高い声を出した。ボクの様子に気づいてくれたかな。 「トヨさん。できませんよね」 「そうかー。トヨおばあは無理ですねー」 ボクには気づいてくれなかったけれど、とにかく『島唄』を回避できれば・・・ 「うちは、どうせ何も弾けないのに。気にしないでいいよ」 気にしてちょうだいよ。『島唄』になっちゃうよー。 「じゃあ、『花』は?」 ありがとう店主!それ、数少ないレパートリーの一つです! 「でも、トヨさんが弾けないってことに、変わりないんだよね」 「そっかー」 まずいなあ・・・
よっしゃ! 「四つ竹ですかー。いいですよねー、あの音」 「だったら、『島唄』でもいいんじゃないのか?」 ドク!余計なこと言わないでよ。
そこへ、トヨさんが声を出した。 「四つ竹?手に持って踊るの?」
「じゃあ、一曲目は『花』ということにして、次は?」 (3)へ |