とんとん (5) | ||||||||||||||||||||||||||||||||
|
やっぱり。 「もう一度、歌ってくれますか」 違う。違っているのはわかる。でも、できない。よし、家に帰ったら、発音にも注意しながらCDを聞いてみよう。 帰りの車の中。話題は発表会だった。ボクとトヨさんの間では、南星園の訪問はいつのまにか「発表会」ということになっていた。 「先生は、何を歌うの?」 「さあ、まだ何を歌うかは決まっていなくて」 「え?決まっていないの?」
「そんなことないですよ。ずいぶん上達しています」 と、ボクが言う前にトヨさんはアハハハと大きな声で笑った。慰める必要はなかったようだ。本当に心配なのは、ボクが何を歌うかなのかも。
一段と大きな声で笑っていた。ボクもハンドルを持ったまま笑っていた。意味はわからないけれど。 家に戻って『とうがにあやぐ』のCDを聞いてみる。あの発音、「る」にも聞こえる。いったいどんな口の形なんだろう。あ、しまった。トヨさんの口を見ておくべきだった。今度会ったときには、トヨさんの口元を正面から見て、発音を聞くことにしよう。 歌詞を見ながら、最後まで聞いてみた。あの「す」に○のついた文字は、って、この書き方はめんどうだから「ズ」と書いておくけれど、この「ズ」は、三番にも二度出てくる。「ズ」の他に「き」に○ってのもある。これまた「ギ」としておくけれど、三番に二度出てくるんだ。やってみたけれど、できているのかどうかがわからない。宮古の歌は、難しい。 「こつこつ」へ→ |