とんとん (2) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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「どうしたんですかー?」 アキちゃんに声を掛けられた。アキちゃんは、おじいさんのことを知っているのだろうか。 「アキちゃん、おじいさんのこと、知ってます?」 「どこのおじいさん?」 「トヨさんの、ですから、夫ですよ」 「え?トヨさん、一人暮らしだと思うけど」 アキちゃんは事情を知らないらしい。ボクは、トヨさんがどうして『とうがにあやぐ』を覚えようとしているのかをみんなに話した。「間に合わないかも」というトヨさんの言葉も使って。ちょっと暗い話で、誕生日のパーティーにはふさわしくないと思ったんだけれど、話さずにはいられなかったんだ。 ボクの説明が終わって、少し重苦しい空気になった。そこへ、タカさんが大きな声でこう言った。 「南星園って、二年前に行ったよね」 タカさんの顔は、アキちゃんの方に向いていた。 「はい。楽しかったですねー。私の初めてのライブでしたよ」 「ライブ?」 ボクは、つい大きな声を出してしまった。タカさんがこっちを見た。
「もう一度やってみたいよね」 「そうですねー。みんなで行けるといいですねー」 そこへ、店主が。 「ここに集まったみんなで、南星園ライブかあ。いいねえ」
と、ここで黙っていたドクも参加。
なんだか、話がどんどん進んでいるよ。みんな本気なのだろうか。タカさんは、もうプログラムを考え始めているらしい。 「プログラムは一時間程度でいいよね」 それを聞いたドクが、
見事なツッコミだ。 「一曲でもいい」 みんなが笑った。笑い終わって、店主がボクの方を向いてこう言ったんだ。 「どう思う?」 次はドクがボクを見る。 「早いほうがいいと思うぞ」 ナンちゃんも無言でボクを見る。最後はアキちゃんが、とどめを刺すように笑顔でこう言った。 「いつにしますー?」
なんだか、すごいことになってきたぞ。 (3)へ |