直線上に配置
ひしひし (3)
ふらふら
いそいそ
かりかり
おたおた
どきどき
きらきら
ぽつぽつ
とんとん
こつこつ
わいわい
いらいら
ずきずき
ひしひし
(1)
(2)
(3)
(4)
わくわく
ゆるゆる
 発表会前日は、午後から集会所でトヨさんと練習した。一週間で見違えるほどの上達、とはいかないけれど、トヨさんの努力は十分に感じることができた。この日は、間違えずに弾ける回数がぐっと増えた。
 夜はS.W.L.に集合。最後の仕上げだ。『花』から始めて、それぞれの持ち歌。『国頭ジントーヨー』は、大丈夫だ。それよりも気になるのは『とうがにあやぐ』なんだけど。驚いた。できちゃったんだ。

 「キャー、トヨおばあ。できたねー」
 「ありがとうねー。できたさー」

 最後まで止まらずに歌えた。ボクは、ちょっとだけ涙がこぼれそうになっちゃったよ。正直に言うと、二粒こぼれた。
 これまでの苦労は無駄ではなかった。舞台への出入りも調弦も問題なく『唐船どーいー』まで通して、お互いに拍手した。店主が清々しい笑顔で言った。

 「みんなご苦労様。明日が楽しみだね」
 「ほんとですー。今夜は眠れないかもー。ねー、トヨおばあ」
うちは、恐くて眠れないはず。はー、明日は何を着ていったらいいかね?」

 妙な沈黙があった。店主の表情が固まっていた。ドクの口が最初に動いた。

 「衣装か」

 それを聞いて、みんなが口々に話し始めた。何を言っているのかわからない。

 「待った!ちょっと待って!」

 店主が一人ずつ意見を聞く。タカさんは、ライブ用に「打ち掛け」という法被(はっぴ)のような物を持っていて、それで歌うものだと思っていたらしい。ドクは紋付きに袴ならあるんだって。でも、他のメンバーは舞台で着るような衣装は持っていない。結局、店主が締めくくった。

今から揃えるわけにも行かないし。まあ、そのあたりは自由ってことで」
いいんじゃないの。いろんな歌が集まっているんだしさ、衣装が違うってのも楽しいぜ。ま、肩の力抜いて、楽しく行こう」

 考えたって仕方ないわけで、結局何でもあり、ということになった。最後に衣装という大きな問題が出てきたけれど、みんなの気持ちが沈むことはなかった。ここまでがんばってきたことが、舞台への自信にもなっている。衣装ごときでゆらぐようなことはないんだ。衣装があればもっとよかっただろうけれど。


(4)へ

トップページへもどる
直線上に配置