ひしひし (2) | |||||||||||||||||||||||||||||
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「何にしようか?」 「チームS.W.L.ってのは」 「ドク、それって、沖縄の歌を歌いそうじゃないですよねー」 アキちゃんの言うとおりだ。で、S.W.L.って、何の略なんだろう。
「三線の会」 「そのまんまじゃん」
「ちゅら海、ですか?」 「使い古された感じなんだよね」 『ちゅら』というのは、美しいという意味だと、旅行ガイドブックに載っていた。『ちゅら海』で『美しい海 』という意味なんだね。ボクは、おばあさんから教えてもらった宮古の言葉を思い出そうとしていた。宮古では 『ちゅら』とは言わないそうだ。 「かぎ・・・えっと・・・」 ボクが続きを言えないでいると、トヨさんが、 「かぎすま」 「トヨおばあ、どういう意味」 「綺麗な島という意味であるわけ」 そうだ。『かぎ』だ。『とうがにあやぐ』にも出てきた言葉だ。『かぎ』が『美しい』、『すま』は『島』の意味だから、『美しい島』。店主は気に入ったみたいだ。
とういわけで、グループ名は『かぎすま』に決定。なんだか、宮古民謡専門のグループみたいだけれど、まあ、みんなが気に入ればいいんだし。 このあと、全演目を通してやってみた。歌はほぼ完成している。トヨさんを除いて。 昨日、集会所で練習したときには、一度成功したんだ。でも、人前で演奏するとなると話が違う。本番では、もっと大勢の人が見ているわけで、今日以上に緊張するはずだ。 何度間違えてもいいんですよと言いたいのだけれど、それはボクの勝手な優しさなんだ。トヨさんにだってプライドはある。お客さんには立派な歌を聴いてもらいたいはずだし、間違えればはずかしい。そう。おじいさんも聞いてくれるはずなんだから。あと一週間。トヨさんは自宅で練習してくれるだろう。土曜日の練習も一回残っている。きっとできる。信じてがんばる。
「オレもだ。店を休んでくれるんなら、夜でもいいかな」 「じゃあ、七時ってことで」 (3)へ |