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いらいら (4)
ふらふら
いそいそ
かりかり
おたおた
どきどき
きらきら
ぽつぽつ
とんとん
こつこつ
わいわい
いらいら
(1)
(2)
(3)
(4)
ずきずき
ひしひし
わくわく
ゆるゆる
 ドクの『かぎやで風』も、タカさんとナンちゃんの八重山民謡も、堂々とした演奏だ。まったく危なげがない。特に、タカさんは歌の説明も本番通りにしっかり入れていた。さすがだ。
 次はトヨさん。おっと、トヨさんの三線とボクの三線の音を合わせておかないと。

すみません。ちょっと待って下さい。調弦するの忘れてました」

 トヨさんには、座って演奏してもらうことにする。ボクは、トヨさんの斜め後ろに椅子を置いて座ることにした。調弦が済んだ。ボクは、小さな声で「どうぞ」と声をかけた。
 トヨさんが歌持を始める。ボクが合流する。昨日練習した通りだ。
 内容はよくなかった。初めてみんなの前で演奏するのだから、うまくいくとは思っていなかった。トヨさんの三線が止まるのは予想していたんだ。トヨさんが止まっても、ボクは演奏を続けているからなんとか最後まで歌いきって欲しかった。ところが、トヨさんは自分の三線が止まると歌も止まってしまう。
 一番の途中で二度。二番では三度三線が止まってしまった。歌い終わって、みんなが拍手をしたけれど、トヨさんは浮かない顔だった。

 「トヨおばあ。うまくなってるー。上手だったー」
 「だめだねえ」

 小さく呟いて、トヨさんが下手へ歩いた。ボクは、その後ろを三線と二つの椅子をもって歩いた。同時に、タ カさんの指示で、『十九の春』を演奏するために、みんなが三線を持って舞台に立つ。その時、タカさんが、

 「三線が多すぎるかもしれないね」

 「賛成だ」とドク。

 「みんなで歌うってことだけど、三線は二丁くらいでいいだろう」
そうですねー。じゃあ、私、歌詞を書いた紙を持って、前に出ましょうか」
 「それ、いいと思うんだよね。でも、一人で大丈夫かな」
 「じゃあ、ボクも一緒に」
では、二人は歌詞を持って、お客さんたちが一緒に歌ってくれるように笑顔を振りまいてもらうってことで」
 「まかせといてくださーい」

 トヨさんは、四つ竹。ナンちゃんは笛、三線はドクと店主になった。タカさんは何をするのかと思ったら、

 「店主、パーランクー借りるよ」

 と、店に置いてある小さな太鼓を持ち出してきた。店主が「せーの」と言いかけて、口を閉じて三線を弾き始める。それに他のみんなが合わせる。三線、笛、太鼓、四つ竹。いろんな音が混じって楽しい演奏になった。お客さんも喜ぶぞ。
 最初の『花』で、ぎくしゃくしていたのがうそのように、まとまった演奏になった。いや、ぎくしゃくしたおかげで、みんなで演奏することの難しさと楽しさがわかってきたんだろう。要領もよくなったし。
 続いて、最後の『唐船どーいー』。ここまでに、みんな自分の声に合わせた調弦で弾いていたんだけれど『唐船どーいー』では、全員が同じ調弦にしないといけない。だから、トヨさんとボクが演奏している間に、他の三線の調弦を済ませておいて『十九の春』が終わったらすぐに『唐船どーいー』を演奏するように。と、タカさんが説明してくれた。
 舞台では、一人ひとりが自分の役割を果たすことが大切なんだけれど、全体を一つの舞台としてまとめるためには、全体の流れを考えておかなければならないんだ。「一人がみんなのために」なんていう、小学校の時に聞いたフレーズが思い出された。


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