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いらいら (2)
ふらふら
いそいそ
かりかり
おたおた
どきどき
きらきら
ぽつぽつ
とんとん
こつこつ
わいわい
いらいら
(1)
(2)
(3)
(4)
ずきずき
ひしひし
わくわく
ゆるゆる
 この会では、みんなが自由に練習をしてきた。曲目も、演奏方法も、何の制約もなかった。そのみんなが初めて一緒に一つの曲を演奏しようとしている。こうなるのは当然なのかもしれない。

 アキちゃんがみんなの顔を見比べている。ドクは黙って天井を見ている。店主が鼻の頭を擦っている。ナンちゃんは後ろを向いている。あれほど盛り上がっていたみんなの気分が、すっかり沈んでしまった。一人ひとりはすばらしい技術を持っているのに、一緒に演奏できないなんて。
 この沈黙はほんの数秒だったと思うけれど、とっても重苦しい時間だった。その時気づいたんだ。みんな上手な人ばかりなんだから、誰か一人に合わせるのは簡単なことじゃないのか。

あの、店主。お手本を弾いてもらえませんか。みんな上手だし、お手本さえあればすぐに合わせられると思うんですけど」

 みんながボクを見てから店主を見た。声を出したのはトヨさんだった。

はいはい。弾いてみなさい。うちは何でもできるからよー。ホイホイホイ」

 トヨさんがそういって、四つ竹を頭の上でカチカチと鳴らしながらくるりと回った。その格好がおもしろくて、アキちゃんが大きな声で笑った。つられて、みんなも笑ってしまった。ドクは笑っていなかったけれど。
 少し和んだところで、店主が演奏をした。きちんと二番まで歌ってくれた。ボクの『花』とまったく同じだ。よかったー。

 「アキちゃん、できる?」
 「まかせてくださーい。違うのは、歌持だけみたいだし」

 その声に、ドクが立ち上がった。演奏する気持ちになってくれたらしい。

 「じゃあ『花』を始めるよ。せーのー・・・は、無しでね」

 また少し笑ってから、演奏が始まった。
 さすがだ。みんな実力があるから、一度形をつかむと問題なく演奏しきってしまうんだ。声も揃っている。その中で歌っているボクも気持ちいい。南星園でこれをやったら、一緒に歌い出す人も多いんじゃないかな。
 歌い終わって、最初に口を開いたのはドクだった。

安心したよ。一時はこのまま永遠に歌えないんじゃないかって思ったね」

 ドクが笑ったのを見て、店主も安心したようだ。


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