わいわい (3) | |||||||||||||||||||||||||
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「聞こえます?」
「工工四ありますかね?」 アキちゃんは、イヤホンを外し、小さな書棚から工工四を三冊持ってきた。ボクは座ったまま聞いていた。二冊目の工工四に目的の『国頭ジントーヨー』があったらしい。開いて、ボクの方に向けてくれた。 「案外短いんですね」 イヤホンを外し、三線を用意した。アキちゃんも三線を構えた。調弦をアキちゃんの三線に合わせる。ずいぶん低い調弦だ。 「じゃ、せーの」
とにかく、歌持を弾いてみた。うん。難しくはない。リズムは弾んでいるけれど、ゆっくりだし。歌持は大丈夫だ。と思っていると、アキちゃんが歌い出した。 「あきとなーまうんじょー、がんじゅーしちうーたみよー」 そこまで歌うと、ボクの顔を見て微笑んだ。ボクも微笑み返した。アキちゃんはまだ微笑んでいるけれど、目に怒りが・・・アキちゃんの三線が止まった。 「あの。次、男ですけど」 そうか。男女でかけ合いなんだ。 「これ、貸してくれますか?」 そう言って、ボクはプレーヤーと工工四を借りて、練習を始めた。アキちゃんは、ボクとの練習を諦めて、別の工工四を開いた。『てぃんさぐぬ花』の練習を始めるようだ。 S.W.L.の店内は、いろんな歌が暴れ回っているような状態だったはずだ。でも、それぞれが集中しているので、他の音が気にならない。ボクもそうだった。イヤホンを耳に当てて聞いて、外して歌って、そんな風に、一時間くらい練習しただろうか。なんとか、一番は歌えそうだと思ったころに、店主がみんなを呼び集めた。 「プログラムを確認しよう」 この前の集まりでは、オープニングの『花』、みんなで歌える『十九の春』そして、最後の『唐船どーいー』だけで、他の曲はまだ決まっていなかった。今日は歌いたい曲を確認して、プログラムを考える。 店主は、『なーくにー』。『なーくにー』は、『山原てぃーまーとー』という曲もセットになっているそうだ。「二曲分になって、ごめんね」なんて言っていたけれど、みんな納得していた。 ドクは『かぎやで風』。「本当は最初に歌いたいんだけどね」と笑っていた。ナンちゃんに笛を吹いてもらいたいと言ったら、ナンちゃんは、だまって頷いていた。 ボクとアキちゃんは、『てぃんさぐぬ花』と『国頭ジントーヨー』だ。ドクが「渋いねえ」と言ったけれど、渋いのかな。 意外だったのは、タカさんとナンちゃん。二人も組んで歌うそうだ。で、話し合った結果、こうなった。 1,『花』(全員) 2,『なーくにー』(店主) 3,『てぃんさぐぬ花』『国頭ジントーヨー』(アキちゃんとボク) 4,『かぎやで風』(ドク) 5,『でんさ節』『とぅばらーま』(タカさん、ナンちゃん) 6,『とうがにあやぐ』(トヨさん) 7,『十九の春』(みんなで歌おう) 8,『唐船どーいー』(みんなで踊ろう) この構成は、「全員」→「一人」→「二人」→「一人」→「二人」→「一人」と、人数を変化させるようにな っている。その後、みんなで歌って気分を高めて、踊ってしまおうというわけだ。 「じゃあ、来週はこの順序で歌ってみよう」 という店主の言葉で、この日の練習は終了になった。 (4)へ |