わいわい (2) | |||||||||||||||||||||||||||||
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まずい。何も考えていない。とにかく、演奏できる曲が少ないんだから、考えたってしかたない。苦し紛れに言ってみた。 「あの、『てぃんさぐぬ花』では」
あら、簡単に決まっちゃったよ。ラッキー。となると、もう一曲はアキちゃんの意見を聞かないといけないよなあ。知らない曲だったらどうしよう。って、知っている曲になる確率なんて、0に近い。 「二人で歌うので、『国頭ジントーヨー』はどうかと思って」 何ですかそれ?とは言えなかった。 「あ、ああ、はい。いいと思います。じゃあ、それで」
今、ボクがどうしようかと思っています。
そう言って、アキちゃんの目が少し大きくなった。 「あの、実は、知らない曲なんで・・・」 「知らないんですか?大丈夫ですかー」 下を向いたボクの顔を、心配そうな上目遣いで覗き込む。無理矢理笑顔を作って、こう答えた。
アキちゃんが胸にかけたペンダントトップを外してテーブルに置いた。と思ったら、それはペンダントではなくて、プレーヤーだった。そう、デジタルオーディオプレーヤーというやつだ。ボクもほしいけれど、まだ持っていない。 「こっちを耳に」 そう言って、イヤホンの片方をボクに差し出した。もう片方はアキちゃんが耳に当てた。コードの長さが短いので、ボクとアキちゃんはテーブルの上でお互いの顔を近づけるようにして聞いている。妙な格好だ。アキちゃんは、薄いピンクのマニキュアを塗った親指で、小さなボタンを何度か押した。 (3)へ |