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きらきら (4)
ふらふら
いそいそ
かりかり
おたおた
どきどき
きらきら
(1)
(2)
(3)
(4)
ぽつぽつ
とんとん
こつこつ
わいわい
いらいら
ずきずき
ひしひし
わくわく
ゆるゆる
 「えー、本日は。エヘヘ」

 お客さんも笑った。

なんだか、知っている人ばかりで安心してしまいます。挨拶はやめて、座開きの曲『赤馬節』から始めましょう」

 拍手が止むと同時に、三線が鳴った。後を追うように笛が鳴る。少し湿ったような柔らかい声が、三線の乾いた音と絡み合っていい雰囲気だ。途中で曲が変わったみたい。さらに曲が変わったように聞こえたけれど、三曲続けて弾いたのかな。

赤馬節、しゅうら節、そして鷲ぬ鳥節でした。どれもおめでたい曲でして」

 やっぱり三曲だ。しばらく曲の説明をしたあと、三線を持ち上げて、それをお客さんに見せながらこんな話が始まった。

先日、この三線の皮が破れまして。裏側だったんですけどね。ちょうど沖縄へ行く予定があったので、その時に破れた三線を持って三線屋に立ち寄りました」

 お客さんは、三線に興味のある人ばかりだ。みんな聞き入っている。

張り替えてほしいんですけれど、費用と日数は?と尋ねたら、だいたい一週間でできるけれど、値段は皮によって違う、と言うんです」

 ほー、とお客さん。

安いのが一万円、良いのは一万二千円。で、一番高いのは百万円」

 え?とお客さん。

一万円と一万二千円ってのはわかりますけど、百万円の皮って、高すぎますよね。いったいどんな皮なんですか?って尋ねたんです。そしたら百万円の皮は、一度張ったら張り替える必要がないんだよって言うんですよ。なぜだかわかります?」

 首を横に振るお客さん。

 「その皮は、毎年脱皮して新しくなるんですって」

 アハハハと笑うお客さんと、きょとんとしているお客さんがいる。

 「あ、信じた人がいますね。冗談ですからね」

 ここで、全員が笑った。
 トークで心を掴んだところで、次は目出度節。曲の説明の最後に、タカさんがこんなことを言った。

 「みなさんに、少しお手伝いをお願いしたいんです」

 歌の合間に入る『メデタイメデタイ』なんていうかけ声のことを「返し」とか「囃子」って呼ぶらしい。それをお客さんにやってもらおうというわけだ。

よく聞いてください。『メデタイメデタイ』これだけ。簡単でしょ。みんなでやってみましょう」

 お客さんはぼそぼそと声を出した。

 「店主!お客さんたち、飲み足りないみたいだね」

 お客さんがアハハと笑った。

もう少しがんばって声を出しましょう。『メデタイメデタイ』ですよ。せーの」

 今度は、大きな声になった。

 「やればできるじゃん!」

 またアハハ。

続きまして。これだけだと思いました?甘いなあ。もう少し長いのがあるんです。『スリスリメデタイメデタイメデタイ』できますよね。せーの」

 繰り返して練習して、タカさんも納得したみたい。で、演奏が始まった。軽快な曲で、なるほどおめでたい雰囲気だ。お客さんが手拍子を打って、返しを入れて、みんなが一つになって楽しめた。終わったときには、一段と大きな拍手だった。

 タカさんの軽妙なトーク。やさしい歌声。ナンちゃんのやわらかい笛の音。二時間のライブは、あっという間だった。


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