きらきら (3) | |||||||||||||||||||||||
|
火曜日の夜だった。ノートパソコンを開いて、インターネットに繋ぐ。S.W.L.のHPを見ると、「緊急告知!」という文字が躍っている。右へ左へと、本当に踊っているんだ。それをクリックすると、今度は、 「タカさん☆フルスロットル」 こちらは、踊らずに点滅していた。タカさんって、あのタカさんだ。八重山民謡を堪能できる二時間のライブ。木曜日夜八時より、か。これは見にいかなくちゃ。予約フォームをクリック。 木曜日。なんとか仕事を終わらせて、S.W.L.にとたどり着いたのは七時四十五分だった。店内は、八割ほど埋まっている。ドクがカウンター席に座っている。隣が空いているけれど、連れがいるのかもしれない。と思ったら、 「おう!座りなよ」 と招いてくれた。知らない人と一緒に座るより、ドクの隣がいい。ひょっとすると、歌の解説もしてくれるかもしれないし。 「先日は、どうも」
と言って、片目をつむった。 ドクの前にはビールとミミガー。それを見習って、というわけではないが、ボクもビールとミミガーを注文した。沖縄そばも食べたかったけれど、ライブ中にそばをすするわけにもいかないよね。 店内をぐるりと見渡した。アキちゃんの顔も見える。あちらはテーブル席でお友だちと一緒なんだ。ナンちゃんは見えない。仕事が忙しいのだろうか。 店の一番奥に、マイクと椅子がある。椅子が二つ並んでいる。あれ?タカさん一人じゃないのかな。あ、そうか。あの椅子は。 思った通りだった。八時三分前に、タカさんとナンちゃんが揃って店の入り口から入ってきた。ナンちゃんは笛で参加するんだ。それで椅子が二つあったんだね。 二人は、お客さんの中をマイクの方へ歩いていく。拍手が起こった。みんな常連さんなのだろう。タカさんは、お客さんと目が合うたびに笑顔を見せて会釈している。ナンちゃんは、目を合わせないようにしているみたい。でも、ボクと目があった。口元が「どうも」と動いた。 (4)へ |