きらきら (2) | |||||||||||||||||||||||||
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「そろそろ、終わりにしましょうか」
この前、アキちゃんとやったみたいに、ボクが三線を弾いてトヨさんが歌うってことだ。 「わかりました。ボクも歌を聴きたいので、お願いします」 ボクは、トヨさんの隣に座った。アキちゃんのように、反対側から工工四を見るのはむりだから。歌持を始めた。トヨさんが歌う。 どこからか、波の音が聞こえてきたような気がした。風も吹いてきたような。宮古島へは行ったことがないのに、島の香りがした。 「はあ、おもしろいね」 あのとき、アキちゃんに話しかけていたのと同じだ。「おもしろいね」って、おもしろいね。 ボクはトヨさんを家へ送り届けて、社宅に戻った。集会所では『唐船どーいー』の練習ができなかったので、家で練習だ。 昨日のS.W.L.での演奏は最悪だった。なのに、楽しかった。お客さんが手拍子してくれて、立ち上がって、踊って、笑って、一人残らず幸せって感じだ。それに、店主と一緒に演奏したのが気持ちよかった。考えてみれば、人と一緒に演奏したのはあれが初めてだったんだ。二人で演奏していると、言葉は交わさないけれど通じ合っている感じがした。「次はおまえ」なんて言われなくてもそれがわかるし、「これで終わりにしよう」っていうのも、なんとなくわかった。ああ、『唐船どーいー』最高! もっと練習したら、もっと歌詞を知っていたら、もっと充実していたに違いない。ボクは工工四を開いて、歌詞を覚えることにした。
CDをかけてみる。三線を弾かずに一緒に歌う。本当は三線を弾きながら一緒に歌いたいんだけれど、三線をCDと同じ調弦にするのって、難しいんだよね。CDと一緒に歌って、今度は自分で三線を弾きながら演奏。だめだ。「とーしんどーいー」と「うとぅにとぅーゆー」って、長さが違うような気が。 この日の練習は、三線を弾くのは諦めて、とにかくCDを聞いて一緒に歌えるようにがんばってみた。何が違うのか、なかなか気づかなかったんだけれど、やっとわかった。歌い出しが違っているんだ。一番の「と」は、〈七〉を弾くときに声を出すけれど、二番の「う」は、〈四〉から歌い始める。それがわかると、なんとかなるもので、だんだんすっきりしてきたぞ。よし。二番もいただきだ。 (3)へ |