ずきずき (3) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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「方法がないわけではないんだが・・・」 そう言うと、ドクターはナースを呼んで薬品の名前か何かを耳打ちした。ナースは少し驚いた顔をしてから、注射器とアンプルを手に戻ってきた。ドクターはそれを受け取ると、静かに話を始めた。
ボクは、迷わなかった。 「それで、いいです。お願いします」
「では、手をそこに置いて。いいですか。少し痛みますよ」 ピーーーー やかんが鳴った。三線に伸ばしていた手を引っ込めた。よし。今日の三線練習はお休みだ。きっと、休ませることが一番の治療法に違いない。でも、練習をしないでじっとしているのはなんだか恐かったので、CDをしっかり聞き込むことにしたんだ。 演奏ばかりに力を入れていたので、じっくりとCDを聞くのは久しぶりだ。この時気づいたんだけれど、歌持と歌に入ってからとでは、三線の音の大きさが違うんだね。歌持は大きい。歌っているときは、少し小さくなっている。歌の邪魔をしないってことなんだろうな。そうだ、アキちゃんと演奏するときも、歌の邪魔をしないように気をつけなくてはいけないな。 土曜日の朝。指を休ませたおかげで、違和感もなくなった。でも、安心はできない。大事をとって、午後のトヨさんとの練習でも、あまり三線を弾かないようにしたんだ。 おもしろいもので、ボクが三線を弾かないと、トヨさんがいつも以上に三線をしっかり弾いてくれる。いや、今まではボクが弾いて邪魔をしていたのかもしれない。この日はトヨさん一人で『とうがにあやぐ』を、最後まで弾ききってくれた。自分のことのように嬉しかったよ。 「ひしひし」へ→ |