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ずきずき (3)
ふらふら
いそいそ
かりかり
おたおた
どきどき
きらきら
ぽつぽつ
とんとん
こつこつ
わいわい
いらいら
ずきずき
(1)
(2)
(3)
ひしひし
わくわく
ゆるゆる
 「方法がないわけではないんだが・・・」

 そう言うと、ドクターはナースを呼んで薬品の名前か何かを耳打ちした。ナースは少し驚いた顔をしてから、注射器とアンプルを手に戻ってきた。ドクターはそれを受け取ると、静かに話を始めた。

この注射を打てば、二十四時間は痛みを感じないでしょう。痛まないだけじゃない。演奏することができる はずです」
 「ありがとうございます」
喜ぶのはまだ早い。薬は二十四時間で切れる。切れた後は、その人差し指は二度と動かなくなってしまう。永遠にね」

 ボクは、迷わなかった。

 「それで、いいです。お願いします」
あなたの指は舞台のためだけにあるんじゃない。これからの長い人生のことを考えなくてはいけません」
いえ。いいんです。ボクは、明日の『唐船どーいー』のために辛い練習を続けてきたんです。人生をかけてきたんです。ステージに立てないなら、ボクの人生は意味のないものになってしまう」
そこまで言うのでしたら。いいでしょう。本当に後悔しませんね」
 「はい」
 「では、手をそこに置いて。いいですか。少し痛みますよ」

 ピーーーー

 やかんが鳴った。三線に伸ばしていた手を引っ込めた。よし。今日の三線練習はお休みだ。きっと、休ませることが一番の治療法に違いない。でも、練習をしないでじっとしているのはなんだか恐かったので、CDをしっかり聞き込むことにしたんだ。
 演奏ばかりに力を入れていたので、じっくりとCDを聞くのは久しぶりだ。この時気づいたんだけれど、歌持と歌に入ってからとでは、三線の音の大きさが違うんだね。歌持は大きい。歌っているときは、少し小さくなっている。歌の邪魔をしないってことなんだろうな。そうだ、アキちゃんと演奏するときも、歌の邪魔をしないように気をつけなくてはいけないな。
 土曜日の朝。指を休ませたおかげで、違和感もなくなった。でも、安心はできない。大事をとって、午後のトヨさんとの練習でも、あまり三線を弾かないようにしたんだ。
 おもしろいもので、ボクが三線を弾かないと、トヨさんがいつも以上に三線をしっかり弾いてくれる。いや、今まではボクが弾いて邪魔をしていたのかもしれない。この日はトヨさん一人で『とうがにあやぐ』を、最後まで弾ききってくれた。自分のことのように嬉しかったよ。


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