直線上に配置
かりかり (2)
ふらふら
いそいそ
かりかり
(1)
(2)
(3)
おたおた
どきどき
きらきら
ぽつぽつ
とんとん
こつこつ
わいわい
いらいら
ずきずき
ひしひし
わくわく
ゆるゆる
 管理人さんは、在宅していた。申請書をください、と言うと、ちょっと怪訝な顔をされたけれど、少し黄色く なりかけた申請書を手渡してくれた。ついでに聞いてみた。

 「あの集会所って、公営住宅のものですよね?」
うちの社宅と共用なんですよ。もともと公営住宅には集会所がなかったので、こちらの社有地を提供し、あちらが集会所を建てた。だから、どちらも利用できることになっているんです」

 へー、そういうことか。今まで知らなかった。お年寄りが集まっているだけで、他に利用しているところなんて見たことなかったもんなあ。

 申請書は簡単なものだった。使用する部屋、時間、目的、使用責任者の名前。それに「施設を大切に使います」といった約束をするってことだけ。施設使用料は、使う部屋によって違うらしい。

 集会所は、その面積の半分以上をホールが占めている。ホールは小学校の教室を二つ合わせたくらいの広さで、小さな舞台がある。舞台といっても、踏み台程度の高さで、照明も幕もない。大きめのお立ち台といった感じだ。舞台の横のドアから後ろへ回ると、廊下に沿って小さな炊事場、会議室、そして三つの和室が並んでいる。その向こうは非常口だ。

 和室三号。それが、ボクが借りた部屋の名前だ。三つの和室の中で一番小さい。四畳半で真ん中には座卓一つ。部屋の隅に座布団が五つ重ねて置かれていた。窓が一つあるけれど、窓の向こう側はポンプ室の壁になっている。暗い部屋だ。でも、これは好都合なんだ。住宅からも社宅からも、一番遠い部屋になっていて、少しくらい大きな声を出しても、だれにも迷惑はかからないはずだから。それに、料金が一番安い。

 ボクは、三線と工工四を用意して、『唐船どーいー』の練習を始めた。
 この前、店主に聞いてもらったのは「とーしんどーいー・・・よーいやな」まで。だいたい半分くらいだ。店主の言葉では、「できている」らしい。まあ、一応止まらずに歌えるので、できていると言うことにしておこう。その続きから練習する。
 むずかしいのは、「わかさ」の部分。ここの指使いが不思議な感じなんだ。「よーいやな」のあたりまでは、「パッカパッカ」と跳ねるリズムが「女弦中弦女弦中弦」とか「中弦男弦中弦男弦」ってな感じで、指が動きやすかった。ところが、「わかさ」の部分は「男弦中弦男弦中弦」となる。何が不都合か?
 「パッカパッカ」が「女弦中弦女弦中弦」の時は「パッ=女弦、カ=中弦」という形だ。つまり、「パッ」を弾いたら、次の弦「カ」は上にある。これは「中弦男弦中弦男弦」の時も同じことだ。ボクの手はこのような動き、つまり「パッ」の弦と「カ」の弦の関係が、下と上になってくれている方が動きやすいらしい。
 実験してみた。「パッカパッカ」を「〈七〉〈四〉〈七〉〈四〉」で弾いてみる。楽だ。「〈尺〉〈老〉〈尺〉〈老〉」これもできる。スピードアップしても大丈夫。ボクって、素質ある?

 ところが、「〈老〉〈尺〉〈老〉〈尺〉」にしてみると、とたんにぎこちなくなってしまう。ピックが弦にひっかかったり、空振りしたり。
 できるようになる方法は?わかっている。繰り返し練習することだよね。まず、ぎこちなくならない程度のスピードで練習をしてみる。そう。ゆっくりやれば、できないわけではない。でも、だんだん早くなって、破綻する。はあ。


(3)へ

トップページへもどる
直線上に配置