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エピローグ
 おじいさんの嬉しそうな顔は、呆れたような顔に変わっていた。そして、低い声でこう言った。

 「安心しなさい」

 ちょっと恥ずかしくなった。

 「すみません。あの、続きをお願いします」

 おじいさんは、笑顔に戻って話の続きをしてくれた。三線の歴史の後は、三線が沖縄の人にとってどれほど大切か。三線がどれほど素晴らしい楽器か。沖縄の歌や踊りがどれほど美しいか。などなどなど。とにかく三線と沖縄のことをいろいろ聞かせてくれた。ボクは、人の話を聞くのが嫌いではない。いや、好きな方だと思う。おじいさんの話もぜんぜん退屈しなかった。だけど、ボクの知らない事が多すぎて、あまり理解できなかったのが残念だ。それにもう一つ残念だったのは、なぜボクの家におじいさんがやってきたのかがわからないままってこと。
 話が終わった。この棒が沖縄の三線の部品だということはわかった。糸巻きのことなんだね。

 「おもしろいデザインですよね」
 「では、願い通り、三線を教えてやろう」

 え?会話になっていないぞ。読者がとまどうよ。二〜三行抜けてるんじゃないかって。ボクはそんなお願いしていないんですけど。

 「お言葉はありがたいんですが・・・」
 「遠慮はいらんよ」
 「遠慮しているわけじゃなくて」

 三線なんて持っていないし、もちろん弾けない。そもそも、子どもの頃から楽器ってやつが苦手なんだ。中学校と高校では美術をとっていた。自慢じゃないけれど、美術の成績は中の下ってとこ。美術が得意だから美術をとったんじゃなくて、音楽が苦手だから美術をとったってわけ。よくある話でしょ。

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