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エピローグ
 「宝くじで、一等が当たるように。お願いします」

 ボクは宝くじなんて買ったことがない。当然、一枚も持っていない。でも、そんなことは関係ない。当たりくじを出してくれればいいんだから。
 手の平をズボンでぬぐいながら待っていた。すると、今まで威厳すら漂わせていたおじいさんが、少し落ち着き無く早口でこう言った。

 「・・・他には?」

 他には?ってことは、願い事をもう一つ叶えてくれるのかなって一瞬喜んだ。でも、ちがうってことはすぐにわかったよ。胸を張って座っているけれど、目がおよいでいたからね。この願い事は叶えることができないんだね。素直に「それは無理」って言えばいいのに。「現金で一億円」と言いかけてやめた。そんなことができるなら、宝くじだって当ててくれるよ。あの様子じゃあ、あまり大きな事を言ってはだめらしい。
 ボクは少し考えて、とっても現実的なお願いに・・・このおじいさんを前にして、現実的というのもおかしな話だけれど、とにかくこんなお願いに変えてみた。

 「今進めている商談が、うまくまとまるようにお願いします」

 ボクにとって初めての大きな商談なんだ。相手は、業界で知らない人はいない大会社。もしこの商談をうまくまとめることができれば、うちの会社にとって最大の取引先を確保できることになる。そして、ボクにとっては最大のご褒美、ボーナスのアップが期待できる。おじいさんの力でなんとかなればと思ったんだけど、

ショウダン?ショウダンだったら、それはまあ、自然にうまくいくんじゃないかな。たぶん・・・」

 そう言って、三回頷いたけれど、ボクと目は合わさなかった。商談の意味を説明しようと思ったけれど、たぶん無駄だろう。もっとわかりやすいのにしてみよう。

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