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第四章 (1)
プロローグ
第一章
第二章
第三章
第四章
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第五章
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第八章
第九章
エピローグ
 日曜日の朝だ。昨日は何時まで三線を触っていたっけ。あ、しまった。ドラマを見るの忘れてたよ。そういえば、昨日は家にいたのに一度もテレビをつけなかったな。生まれて初めてじゃないかな。ま、そのことは後悔していなかったけれど、今夜のバラエティ番組は見逃したくなかったので、ビデオをセットしておいた。
 洗面所で歯を磨く手をとめて、鏡から一歩下がって、三線を構える格好をしてみた。いつかこんなふうに、人前で演奏したりして。ちょっとアゴを引いた方がいいか。斜め右からのスタイルもいい。あ、よだれ・・・
 着替えてから、新聞を取りに行くとき、廊下で隣のおばさんに会った。いつものように挨拶をしたんだけれど、なんだか不機嫌そうに見えた。ま、そういう日もあるよね。
 今日は書店へ行く。沖縄のことを、少し調べてみたくなったんだ。ボクは沖縄へ行ったことがある。高校の修学旅行で一度だけね。でも、三線の糸巻きを見ても三線の糸巻きだとわからないくらい、三線のことも沖縄のことも知らない。おじいさんからいろいろ話を聞いたけれど、何もわからないまま話を聞いたって、聞いた話がこれまたわからない。この機会に、少しは勉強しておこうと思ったわけ。

 大型の書店だけれど、さて困った。いったいどこに沖縄や三線のことがわかる本があるんだろう。歴史の本や基地問題。うん。これも大切なんだけれど、もう少し沖縄の文化全体を見渡せるような本はないだろうか。なんて、書棚の前で腕組みをしてみた。早い話が難しい本は避けたいわけで。結局、一番ボクに合っていたのは旅行のガイドブックだった。
 手にとってぱらぱらとめくってみると、これが意外に勉強になるんだ。観光地の案内だけじゃなくて、沖縄の歴史も文化も書かれている。三線のこともだ。ま、旅行に行きたくなるような書き方をしているわけだから、誇張されている部分もあるだろうから、気を付けて読まないといけないかもしれないけれどね。で、その中に書かれている沖縄名物に、「オバア」というのがあった。

 「オバア?おばあさんが、名物?」

 沖縄ではおばあさんに対して、愛情と尊敬を込めて「オバア」と呼ぶんだそうな。じゃあ、おじいさんには「オジイ」だよな。と思って読み進めると、正解だった。ただ少し違っていたのは「沖縄の元気なオバアに比べて、オジイは存在感がない」って、おい、そんなこと言い切っていいのか?でも「オジイ」という呼び方。いいね。


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