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「 |
車をください。そんなに大きくなくていいです。ガソリン代大変だし。軽自動車でもいい」 |
「車かあ・・・」
おじいさん、だんだんうつむき加減になってるよ。
「駅が近くて広い部屋に引っ越したい」
「他には?」
声が小さくなった。
「彼女がほしい」
「 |
おまえ、彼女がいないのか。かわいそうに。がんばりなさいよ」 |
なんだこいつ。ちょっと元気になってるし。
「じゃあ、何かおいしいものが食べたい」
「何かって言われても」
だんだん腹が立ってきた。結局、こちらの願い事は何一つ叶えられないってことじゃないか。
そうだ、どんな願い事なら叶えられるのかを聞いてみればいいんだ。いや、まてよ、「叶えられる願い事を教えてください」という願い事が叶ってしまったら、それでおしまいになるかも。それは避けたい。せっかくのチャンスを逃したくない。どうすればいいんだろう。いったい、このおじいさんの望みは何なのか。って、変だよね。ボクの願いを叶えてくれるはずなのに、どうしてボクがおじいさんの望みを考えているんだ。
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