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三線を持って列車に乗るのは、今日で二度目だ。一度目は、買った日。
日曜日の午後の列車はお客さんが少ない。肩から掛けている三線ケースも邪魔にはならない。自動改札も難なくクリア。パーティー会場のあるホテルに入るとき、不審者扱いされないかと心配したけれど、それも大丈夫。でも、エレベーターの中では、視線を感じた。
エレベーターを降りると、案内板が出ていた。左らしい。見ると人が並んでいる。ふーん。受付ってのがあるんだ。
受付で名前を書いていると、ポンと肩をたたかれた。社長さんだ。
「あ、どうも。本日は、おめでとうございます」
「ありがとう。今日はよろしくお願いしますよ」
社長さんは、すぐに別のお客さんの方へ呼ばれていった。忙しそうだ。
「こちらが、プログラムです」
受付から二つ折りの紙を差し出された。そして、
「楽屋は、あちらになっております」
パーティーにプログラム?それに楽屋?楽屋って、舞台やテレビに出演する人が、準備をする部屋のことだよね。へー。なんだか芸能人になったみたい。言われたとおり、会場をぐるりと回り込むように長い廊下を歩く。角を曲がると、とたんに騒がしい声が聞こえてきた。教えてもらった楽屋はここらしい。でも、人だかりができている。中に入るとき三線を持ち上げて、体を横にしてやっと入った。誰なんだこの人たち。という疑問と同時に答えが出た。ここは楽屋だ。とすると、出演者ってことだよね。
さっき受け取ったプログラムを開いた。プログラムは一番の「新郎新婦紹介」から十七番の「謝辞」まで。その間には、「余興(新婦職場友人)」だの「余興(県人会青年部)」だの、とにかく余興の文字が並んでいる。いや、祝辞も二カ所はあった。最後から二つ目は「カチャーシー」と書かれている。つまり、ほとんどが余興なんだ。もう一度プログラムを見た。ボクの名前は、八番にあった。
「なんだか、想像していたのと違うぞ」
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