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第八章 (1)
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第九章
エピローグ
 「『花』と『安里屋ユンタ』でいいですよ」
 「駄目じゃ!甘い」
 「べつにいいじゃないですか。この二曲で十分でしょう」
駄目じゃ!これを機会に、もう一曲沖縄民謡らしい曲を準備しておけ。社長さんは沖縄のご出身。その社長さんのパーティーなんだから、民謡らしい曲で」
『花』だって『安里屋ユンタ』だって、十分沖縄らしいと思うんだけどなあ」
何を言う!いいか、『花』と『安里屋ユンタ』が悪いとは言わん。しかしな、沖縄には沖縄の言葉がある。沖縄の言葉で歌ってこそ、本当の民謡なんだ」
まあ、そう言われてみればそんな気もしますけどね・・・」
結婚するのは娘さんだが、おまえが一番喜ばせたいのは社長さんなんだろう?」

 そうなんだよなあ。「あなたが私のふる里の歌を勉強してくれているなんて、本当に嬉しい」って、目を見つめて言われちゃったものなあ。ボクにとっては「社長さんのパーティー」なんだよなあ。

 「社長さんのパーティー」。いい響きだよね。「社長さんからパーティーに招待されましてね」とかね。「今日は、パーティーなんですよ。社長さんが是非にとおっしゃるので断れなくて」なんて、アハハ。いいなあ。大会社の社長さんのパーティーって、どんな雰囲気かな。「ごく内輪のパーティーで、堅苦しいことはしない」って社長さんが言ってたから、きっと、家族と親しい友人とで二十人くらいか。いや、社長さんの言う「内輪」だと、もっとかな。
 集まる人も、みんな上品なんだろうな。結婚披露宴なんていう、ごちゃごちゃしたのじゃなくて、落ち着いた中にも華やかさのある大人のパーティーなんだよね。タキシードなんか着てさ。BGMにはジャズ。ピアノトリオの落ち着いた雰囲気だよ。
 食事も、中国料理の丸テーブルで、ガツガツ食べるなんてありえないよ。きっと立食だろう。軽いものばかりだけど、一つ一つが高級なんだよね。キャビアとかも出るんだろうな。どんな味かな。食べ方知らないけど、誰かが食べるのを見てればわかるよねきっと。


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