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第三章 (1)
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エピローグ
 三線は、左手の指で弦を押さえて、右手で弦を弾くっていうことはわかっている。それを同時にやるのは大変だということも、想像できる。

 「まず右手から。右手で弦をはじく練習」

 おじいさんのアドバイスに従って弾いてみた。音は鳴る。うん。いい音だ。また笑いそうになっている頬の筋肉をなだめるのに苦労した。

 「駄目じゃ!弦の上にピックを乗せて、下に降ろすだけ」

 そう。ボクはピックにしたんだ。三線用の爪ももらってある。指にはめてみたけれど馴染めないんだよね。ピックなら指で持つだけ。簡単そうだし、実際簡単だと思った。でも、ボクのやり方が気に入らないのか、さっきからおじいさんはボクの右手を見ながら、いろいろと口を出してくる。言われたとおりやっているつもりなのだが、またおじいさんから「三線を上に向けてはいかん。右手を見ようとするな。構えがなっとらん」と注意されてしまった。
 弦を見ないで、どうやって弾くんだよ。少しくらい上を向いても、困ることはないと思うんだけど。と文句を言いかけてやめた。形が大切ってのは、チンダミでわかったから。ここはおじいさんの言うことを素直に聞いて、慣れるしかない。このまま、「手を見ないで鳴らす」っていう修行を一週間ほど続けなければならないのかと思っていたら、おじいさんの動きは意外に早かった。二分後には次の指示を出したんだ。

 「書くものを用意しなさい」

 ボクは立ち上がって、自分が座っていた椅子に三線を座らせた。背もたれに立て掛けるようにして置いたんだ。すると、

 「駄目じゃ!」

 またきた。今度は何が駄目なの?


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