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エピローグ
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 あれから一ヶ月が過ぎた。その間に、いろんなことがあったよ。

 まず、パーティーの翌日、社長さんからうちの会社に電話があった。上司から「キミ、どうしてあちらの社長さんと?」なんて言われて、ちょっと鼻が高かった。社長さんからは、最高のパーティーになったって、お礼を言われた。ボクもお礼を言った。すばらしい経験をさせてもらって本当に感謝している。その電話で、沖縄県人会の忘年会が来月あるので、そこで三線を弾いてくれないかと誘っていただいたんだけれど、断ってしまった。オジイがいなくなったばかりで、三線を弾く気にはなれなかったんだ。

 三線はやめたのかって?パーティーの後、二日間は弾かなかったけれど、三日目の夜に、とうとう弾いちゃった。オジイを思い出して辛かったよ。でもそれからは、オジイの言っていたとおり、毎日少しは弾くようにしている。最近は、オジイを思い出すために弾いているのかもしれない。河川敷へも行ってるよ。ときどきね。

 あのパーティーの一週間後の日曜日。すごいことがあったんだ。いつものベンチで三線を弾いていたら、声をかけられた。

 「お上手でしたね」

 ぼくは驚きと嬉しさで飛び上がりそうになった。彼女だった。最初にここで出会ってから、ずっとずっと会いたいと思っていた彼女にやっと会えた。なのに、口から出てきた言葉はこれだ。

 「あ、どうも。ご無沙汰してます」

 オジイに話したら、また小心者って言われるね。

 「舞台に立ってるのを見て、びっくりしました」
 「へ?あの、パーティーで?」
 「はい。私も歌いましたよ。『花』フフフ」

 彼女は、新婦の友人なんだって。偶然って、おもしろいね。そのあと、二人でベンチに座って『花』を歌った。すっかり打ち解けて、携帯の番号を交換したんだ。


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