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困り果てた。なんで困らないといけないんだろう。もう、わけがわかんないよ。
「おまえ、手に持っているものが何か、わかっているのか」
考え事をするときに、目の前の物をもてあそんでしまうクセ。ボクだけじゃないよね。
「わかりませんけど・・・」
あなたの家ですか?って言っても、笑ってもらえないだろうな。
「三線のカラクイじゃ」
「ああ、サンシンって、沖縄の」
「そうそう。沖縄の。知っとったか」
「 |
高校の修学旅行が沖縄だったんです。三線も一度だけ見ましたよ」 |
「おお、そうかそうか。ハハハ、そうかあ、ハハハ」
とっても嬉しそうだ。その様子を見て、ボクもほっとした。おじいさんは、目の前に三線があるかのように、身振り手振りを交えながら説明を始めたんだ。
「 |
三線というのは、もともと中国からもたらされたと言われている。中国では三弦と書くらしい。で、この三線が沖縄から堺の港に渡って、やがて三味線となる。言うなれば、三弦が親。三線と三味線はきょうだいみたいなものだ」 |
嬉しそうに話をしてくれると、聞く方も楽しいよね。しばらく話を聞いていたんだけど、途中で大変なことに気づいたんだ。ボクは慌てて話を遮った。
「 |
ちょっと待った!棒の説明をして、はいさようなら。ってことはないですよね。だって、ボクは質問したわけじゃありませんから。そっちで勝手に説明してくれたんだから、まだ願い事は叶えてもらってないですよね、ね、そうですよね」 |
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