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第八章 (4)
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エピローグ
 さて、『てぃんさぐぬ花』の練習は。
 そうそう、この曲を教えてもらうときに、「調子(ちょうし)」というのも教わった。調子が良い。という調子ではなくて、調弦の種類だ。今まで使っていた「3C 3F 4C」とか「2A 3D 3A」というのは「本調子」なんだって。で、たとえば「2A 3D 3A」の本調子の場合、女弦を「2G」に下げると「三下げ(さんさげ)」になるらしい。『てぃんさぐぬ花』は「三下げ」で演奏する。ま、調弦はチューニングメーターの力を借りれば、本調子も三下げも、特に苦労することはないんだけど。ただ、三下げとはどういうものかというのは覚えておく必要がある。あと、「二揚げ(にあげ)」と「一揚げ(いちあげ)」という調子もあるんだって。
 三線は、工工四を見ながら弾けるようになった。なんとかね。歌は知らなかったから、CDを買ってきて何度も聞いた。短い曲だし、きれいな歌だし、楽しみながら覚えられた。時間もそれほどかからなかったよ。
 ところが、歌と三線を合わせるところで困ってしまった。三線の音と、歌とが大きく違っているんだ。しかも歌の出だしから。「どうして同じ音じゃないんだろう」と文句も言いたくなるよね。

 四苦八苦しているボクを、オジイはだまっているだけだった。そうだ、自分で乗り越えなければならないんだ。わかっている。練習方法は『花』と同じだ。問題点を見つけ、繰り返し練習をして、解決する。わかっているけれど、難しい。

 物事には、理解できてから実践できるようになるものと、実践できてから理解できるものがあると思う。タブ譜や工工四を読んで、三線を弾くというのは、理解すればだいたい実践できる。歌と三線の調和というのは、実践できてから理解できるんじゃないかな。
 そんな難しいことを考えながら練習しているわけじゃないけれど、時には立ち止まって考え、時には考えずに突き進み、そうこうしているうちに、『てぃんさぐぬ花』も形ができてきた。まだ自信はないけれど、止らずに最後までいけるようになったんだ。
 ただ、上達するにつれて、一つの不安が頭をもたげてきたんだ。ボクがこのまま順調にいって、パーティーでの演奏を成功させたら、オジイは「願い事を叶えた」ことになるのではないだろうか。
 ボクは、考えるのが怖かった。だから、考えるのをやめた。


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