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第八章 (3)
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エピローグ
 いやあ、なんだかカッコイイよねえ。セレブって言うのかな。やっぱり着ていく服も考えておかないといけないよね。アハハハ。

・・・だから、沖縄の言葉で歌ってこそ三線のだな・・・おい!聞いているのか?」

 オジイの声で、我に返った。

へ?あの、はい。もう一曲ですよね。やります。がんばります」
もう一曲は沖縄の民謡らしいのがいい。といっても、難しい曲を覚える時間はない。そこで、童謡にする」

 オジイは『てぃんさぐぬ花』というのを推薦してくれた。

 オジイの指示で、紙とボールペンを用意した。ボクはてっきりタブ譜を描くためだと思っていたのに、今日は升目を描きなさいと言う。言われるままに描いた。そして、コンビニへ走って、それを3枚コピーしてきた。

中学の〈中〉、漢数字の〈五〉。工場の〈工〉。次の〈中〉は線の上に」

 「何です、これ?うまくなる呪文とか?」

 オジイは笑わなかった。

 「『工工四』。今日からこれでいく」

これでいくって言われても、何のことかわからないですよ」

 「いいか、工工四というのは・・・」

 なんでも、三線の世界では一番ポピュラーな楽譜だそうだ。ほとんどの沖縄音楽は、この形式で表記されていると言っても過言ではない。のだそうだ。

タブ譜でいいですよ。時間がないんだから。タブ譜にしてください」

 「駄目じゃ!今日からは、これ」

 頑固なオジイだ。とにかく、その工工四を完成させた。で、どう見るのこれ?
 左手で押さえる場所は、タブ譜のときと同じ。つまり、人差し指は「1」のシール。中指は「2」、小指は「3」または「3♯」。当然といえば当然だよね。問題はその表し方だ。タブ譜は三本の線と数字だが、工工四は漢字で表されている。最初は面食らった。「か、かんじ?」とね。でも、慣れるにつれて、これもいいなと思えてきた。タブ譜は、三本の線と数字の両方で一つの音を表す。例えば、こんなふうに「3」と書いても、どの音かわからない。線がないからね。わかるように文字で書くには「中弦3」みたいな書き方をしないとだめだよね。一方、工工四は漢字一文字だけでいいんだ。「尺」と一文字書けば、音が決まってくる。確かによくできている。ボクの得意な『きらきら星』は「四 四 工 工 五 五 工」と書けるわけだ。


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