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第四章 (6)
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エピローグ
 中弦でもやってみた。女弦も中弦も男弦も、「1」までの距離は同じなんだ。同じような感覚でできる。
 続いて、「2」。今度はもっと下なの?ふむふむ。これは、少し指を伸しぎみにするといいんだね。
 「3」の小指は、難しい。自分の指なのに、自分の指じゃないみたい。押さえているんだけど、力が入らないし、感覚も鈍いみたい。しかも、遠いんだなこれが。ちょっとがんばって伸ばして、やっとオジイの笑顔。

 「よし、覚えたな」
ちょ、ちょっと待って。無理ですよ。一度で覚えられないですよ。印もないのに」
 「じゃあ、印をつけたらいいんじゃないの」

 確かにその通りだ。で、どうやって印をつけようか。サインペンで棹に直接描くわけにもいかないよね。黒い三線の棹を見ていて、ふと、ビデオテープを思い出した。ラベルシールがある。
 ビデオテープのケースの中に挟まっているラベルシールを取り出した。うん、使えそう。数字を書いて、とりあえずさっきの記憶を頼りに「このあたりだろう」って場所に貼ってみた。ちょっと見苦しいけれど、演奏のためだ。しかたない。で、試しに押さえて鳴らしてみると、

 「「1」はいいけれど、「2」はもう少し下へ」

 シールを剥がして、貼り直した。

 「で、「3」の下に、もう一枚「3♯」を貼っておくように」

 「3♯」の意味はわからないけれど、書いて貼った。

 「あのう、シールはこの4枚でいいんですか?」
 「ああ、十分じゃ」

 とすると、三線ってのは簡単な楽器だよね。押さえる場所って、これだけでいいの?本当にこれだけで演奏できちゃうの?それぞれの、指の担当場所は一カ所ずつ。いや、三本の弦があるから三カ所ずつか。でも、簡単だよね。

 「印は、できるだけ見ないように」

 見るなって言われても、見ないんじゃ、貼っても意味無いじゃん。ま、時々見るってことで。

 「このシール、ずっと貼っておくんですか?」
いや、人前で演奏できるくらいになったらはがしなさい。あまり格好良くないからの」

 ま、そうだよね。練習用ってことね。はがせるくらいうまくなれるかなあ。


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