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第四章 (5)
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エピローグ
 「左手の指を見せなさい」
 「は?はい」

 何事かと思った。とにかく、手をパーにして手のひらを見せた。

 「爪の方」

 だったら、爪を見せろって言ってよ。

 「三線を弾くには、太すぎるとか、短いとか?」
いや。指の太さや長さは、関係ない。この二倍も太い指で、きれいに早弾きをする人もいる。ふん。きれいに切っておるな。大丈夫だ」

 爪を切ってあるかどうかを確かめたらしい。特に、左手の人差し指の爪が伸びていると、三線を傷つけやすいんだって。あ、そうか。今日から左手も練習するんだ。

 「書くものを用意して」

 タブ譜だ。昨日は三本線に丸を書いただけだったけれど、今日は「1」と「2」と「3」も書いた。数字だ。と言うことは、昨日のは、丸じゃなくて「0(ゼロ)」だったんだね。
 オジイが説明してくれた。「1」は左手人差し指で、「2」は左手中指。「3」は小指なんだって。薬指は使わないことになっているらしい。

使う指はわかりますけど、どのあたりを押さえればいいのかがわからないですよ」
 「とりあえず、女弦の「1」を鳴らしなさい」

 やってみた。左手の人差し指で、女弦を押さえて、右手で女弦をはじく。「テン」。鳴ったけれど音が伸びないぞ。

駄目じゃ!押さえ方が悪い。指の先の方で、きちんと押さえる」
指が痛いですね。みんな、この痛みをこらえて演奏しているんですか?」
最初はそんなもんじゃ。だんだん加減がわかってくる。痛くもなくなる。音がきれいに伸びるように弾きなさい」

 もう一度鳴らした。うん。けっこう音が伸びたぞ。オジイを見た。手のひらを上に向けて「上へ」のサイン。もう少し上を押さえるってことみたい。もう一度鳴らした。まだ上だって?ずいぶん窮屈に曲げるんだな。これでどうだ?と、今度はよかったみたい。オジイが笑った。


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