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第五章 (4)
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エピローグ
 昨日の夜も一生懸命練習した。なのに、あまり上達しなかったなあ。落ち込んじゃったよ。才能がないのかねえ。で、今日の夜やってみたらけっこうできてたりするんだ。とにかく、やった分だけ成長するんだ。たとえゆっくりであってもね。

 オジイが教えてくれた『きらきら星』や『うみはひろいな』の一部分を歌いながら弾くことはできるようになった。でも、まだ三線で一曲弾けます歌えますとは言えないよね。どうせやるなら、人から喜んでもらえるような歌をやってみたい。オジイも「人前で二三曲演奏できるように、ちゃーんと教えてあげるからね」と言ってたよね。なんて考えながら三線を弾いていたら、今夜もオジイが現れた。

 「そろそろ曲を決めよう」

 待ってました!

 「何がいいでしょう」
 「うん・・・何がいいか」

 沖縄の歌。「島唄」「花」「涙そうそう」そうそう。「ハイサイおじさん」ってのも聞いたことがある。

 「『花』ってのは、どうですかね」
 「よし。それでいこう」

 ボクはちょっと驚いた。あのオジイのことだから「ダメじゃ!最初の曲はこれじゃ!」とか言って別の曲を押しつけられると思っていたのに、こちらの提案をあっさり受け入れてくれた。ボクは、『花』の入ったCDを用意した。オジイの指示通り、タブ譜を作った。長くて大変だったけれど、そう、これがボクの最初の持ち歌になるって思ったら、「0」や「1」を書き込むのも楽しいよ。
 CDをかけた。ボクは聞きながら歌を口ずさんでいた。オジイはボクの様子を見て、

 「よし、大丈夫だな。三線を用意しなさい」

 歌を覚えているかどうか確かめたんだね。好きな歌だもん。ちゃんと覚えてますよ。歌詞はあやしいけれど。
 さて、タブ譜だ。リズムで少し苦労はしたけれど、それほど難しくはない。繰り返して練習した。オジイからは、音がずれる場所を注意されたけれど、うん、だいたいいけそうだ。三線の演奏だけは。

 「歌いなさい」

 CDに合わせて歌うことはできる。でも、自分で三線を演奏して歌うとなると簡単にはいかない。何度も何度も立ち止まって、繰り返し練習する。少し歌えるようになったけれど、最後まで演奏しながら歌えるには、数日かけて練習しないといけない。当然だよね。


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