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第一章 (4)
プロローグ
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エピローグ
 棚に並んでいる三線の値段を見る。一番安いのは、3万円だって。ふーん。これでいいのかな。しばらく見つめていたけれど、おじいさんからの声は聞こえない。そっか、ポケットの中からじゃあ見えないんだろうな。そこで、声を出してみた。

 「これが3万円の三線かー。これくらいでいいのかなー」

 少し待ってみたけれど、おじいさんの声もしないし糸巻きも反応なし。あ、音だ!三線は楽器だもんね。値段だけじゃわからないんだよね。ボクは振り返って店員さんに声をかけた。

 「すみません。この三線、触ってもいいですか」
 「どうぞ、手に取ってみてくださいよ」

 お店の人はパソコンのキーボードを二つ三つ叩いてから、笑顔で近づいてきた。そして、三線を手渡してくれた。
 初めてだけど、とにかく弦をはじけば音が鳴るんだろう。親指で、一番太い弦を弾いてみた。ぶーんと鳴った。おじいさんの反応無し。真ん中の弦も一番細いのも弾いてみたけれど、反応はなかった。でも、なんだかいいね。三線の音。初めて触ったよ。
 さっきの店員さんは、まだボクのそばにいた。ボクと目が合うと「こっちは5万円なんです」と言って二つ向こうに立ててある三線を指さした。一応、5万円のも手にしてみた。

 「こちらは棹もいいですし、皮も本物なんです」

 なるほど、棹は同じに見えるけれど、皮がリアル。ってことは、さっきのはヘビ柄のプリントなんだ。いやー、本物はやっぱり違うね。で、どれを買えばいいんだろう。こっちか、さっきのか、それとも他のか。うーん、迷う。何を基準にしていいのかがわからないんだよなあ。そこで、今度は大きめに声を出してみた。

そっかー、こっちは5万円なんだー。ふーん。皮も本物だし、こっちの方がいいかなー」

 返事があった。


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