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第一章 (3)
プロローグ
第一章
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エピローグ
 沖縄県以外にも三線の販売をしているお店ってのがあるんだな。インターネットで探してみたら、うちから電車で一時間半。ちょっと遠いけれど、いや、沖縄まで行って買うことを考えれば、ずいぶん近いところに三線の販売店があった。ネットショッピングもできるんだけど、電話で尋ねたら今日も営業しているらしい。応対も丁寧だったし、一度店を見ておくのもいいだろうと思って、直接買いに行くことにした。

 ボクは、ズボンの左ポケットにあの糸巻きを入れておくのを忘れなかった。三線を買うなんてもちろん初めてだ。どれを買えばいいのか迷うに決まっている。そのボクに、おじいさんが三線を買うときのアドバイスをしてくれるかもしれないでしょ。「こっちがいいぞー」なんて声がするとか、必要な物に近づくと糸巻きがピクピク動くとかね。

 店のドアを開けると、いきなり沖縄の音楽が聞こえてきた。ドア一枚隔てて、ここはいつも沖縄って感じだな。中にはいると、今度は不思議な臭いだ。嫌じゃないけれど好きでもない。何だろう。三線の皮って、蛇だったよな。蛇の臭い?まさか、それはないだろう・・・そうかも。
 結構奥行きがある。正面にはガラス戸棚。右手にはデスクとレジと、パソコンが置いてある。店員さんはパソコンの前に座っていた。ボクを見ていらっしゃいと声をかけてくれたけれど、こちらに近づいてくる様子はない。ボクは、聞こえないくらいの声で「どうも」と言って、左の壁際に並んだ三線の前に立った。


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