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第三章 (2)
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エピローグ
 「三線が倒れたらどうする!」

 あ、そうか。何気なく立て掛けたけれど、確かに危ないよね。あわてて三線を持って、ちょっと迷った。そして、テーブルの上に寝かせることにした。寝かせてしまうというのにはちょっと抵抗を感じたんだけれど、ま、これが一番安全だよね。
 立ち上がってから考えた。何を書くのかな。「忍耐」とか「努力」とか書いて壁に貼るとか。いや「右手!」なんて書くのかも。いいけど、人に見られたくないな。とにかく、我が家で一番大きな紙とペン・・・パソコンのプリンタ用紙とフェルトペンの一番太いのをおじいさんに渡した。

なんじゃこれ?鉛筆とかボールペンとか、持ってないの?紙も便せんみたいに線の入ったのがいいぞ」

 どうやら、壁に貼るわけではないらしい。机の引き出しからノートとボールペンを出してテーブルの上に置いた。

 「三本の線を書きなさい」

 おじいさんは、ノートの上で指を動かした。ボクは、その通りに三本の線を書いた。その一本に、小さな丸を書いた。なんだこりゃ?

 「男弦を右手でテンと弾く。やってみなさい」

 おじいさんがボクに描かせたのは、タブ譜というものなんだって。三本の線は三線の弦。一番下が一番太い弦。男弦らしい。とすれば、あとは中弦と女弦だ。おじいさんは、説明しながらボクにタブ譜を描かせていった。紙はタブ譜でいっぱいになった。あと三枚とってきた。
 完成したタブ譜で練習開始だ。おじいさんが指さすタブ譜は男弦に丸が三つ。「テン テン テン」と鳴らしてみた。

 「よし。次じゃ」

 次に指さしたのは、真ん中の線に丸が三つ。中弦を三回「テン テン テン」どう?

 「次」

 女弦だ。「テン テン テン」楽勝だね。

 「次」

 また最初のに戻るの?男弦を「テン テン テン」「次」おっと中弦「テン テン テン」「次」あ、フェイントだ。また男弦に戻った「テン テン テン」

 ボクは、おじいさんの指さす通りに、「テン テン テン」と鳴らし続けた。中弦を鳴らしているつもりが、女弦を鳴らしてしまったり、時には空振りしたりと、あまりうまくいかないんだけれど、おじいさんは飽きもせずに付き合ってくれている。何度も繰り返した。うまく弾くと、良い音が鳴る。失敗すると、音が伸びない。
 しばらく練習を続けていると、うん、できるようになるもんだね。


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