GO MOUTH UNDER MOUTH 本文へジャンプ
ページトップへ
狩俣ぬイサミガ(宮古)その5   
その1へ その2へ その3へ その4へ その5です
 歌詞を覚える。これはもう、どの曲を練習するときにも必要なことです。

 歌詞の覚え方は、二通りあると思います。
 一つは、意味のない言葉を繰り返し唱えることで丸ごと記憶してしまう方法です。呪文を覚えるようなものですね。私が『高那節(八重山)』を覚えたのは、この方法に近いと思います。最初に『鷲ぬ鳥節(八重山)』を覚えたときも、呪文に聞こえましたけれど。
 もう一つは、きちんと意味を理解して覚える方法です。こちらの方が覚えやすいですし、歌の意味を理解した上で歌うべきだという意味で、歌を学ぶうえでは正しい方法だと思われます。しかし、数ある沖縄の歌の中には意味がはっきりしないので、呪文のように覚える以外方法がないということも。

 『狩俣ぬイサミガ』は、もちろん、意味を考えて覚えるべきでしょう。

 前回、工工四の歌詞に手を加えたものを見ながら、歌詞を調べました。









狩俣ぬイサ(m)ミガ
とんがらや家(や)居(う)んうむ
家(や)居(う)らばなうそ(す)でぃ
此(く)り程(ぷど)のそつぃん
海(いん)りだ家居んうむ
ぞ(ず)やぞ(ず)今日(きゅ)や海むり
いざ海むが下りでが
下りならズ海(いんう)だら
ぱがてぃらや取(と)り持(む)ち
んうなぐずぃぬみやらび アガソ(す)ミヤヨ
なしぱ(P)だや 坐(びう)しうんむ
坐(びう)しうらば 如何(いきゃ)すで
くりぷどの そ(す)びゃりん
浜(ぱ(P)ま)ふまだ 坐(びう)しうんむ
ぞやぞ今日や 浜踏ま
いざ浜が ふまでが
ふんならズ 浜だら
いそでぃらやさぎ持ち

 上の句、下の句は対をなしています。ほとんど同じような意味です。
1)狩俣は地名。「んうなぐずぃ」も地名だそうです。「イサミガ」は女性の名前。「みやらび」は美童。
2)友よ、家にいるか?とたずねているそうです。「なしぱだ」はよくわかりませんが、やはり親しい人に呼びかけているのでしょうか。「坐しうんむ」は座っている。ですから、意味は同じですよね。
3)家にいるか、と聞かれて、「いるけど、何?」と聞き返しています。
4)「そウつぃん」「そびゃりん」は、干潮を表しているそうです。「そ」「そ(う)」は、「潮」という意味でしょう。
5)海に下りずに、家にいるのか?と誘っています。
6)「ぞ(ず)やぞ(ず)」は、「さあさあ」という意味らしいです。
7)「いざ」を見たとき、「いざ、行かん!」という意味かと思ったのですけれど、「いざんかい」=「どこへ?」というときの「いざ」。つまり「何処」という意味でした。どこの海へ下りようか?
8)「下りならズ」は「下り慣れた」だそうです。
9)「ばが」は「私の」、「てぃら」は、獲物を入れるカゴのことです。「ティール」という言葉を聞いたことがあります。同じでしょう。「いそでぃら」は「磯用のてぃら」

このように、意味を見ていきますと、ストーリーになっていることがわかります。一つの歌詞を歌えば、その次を想起しやすいわけです。とはいえ、方言ですから簡単にはいきません。発音もむずかしいですし、何度も繰り返して覚える必要があります。

 覚えようと思い立ってから、ここまで二週間ほどかかったでしょうか。まだ完全には覚えていませんが、今度宮古へ、あるいは妻の母に会うまでには覚えておきます。
 とか言いながら、「うわー、明日は宮古だ!今晩のうちに覚えてしまわなければ・・・」なんて、一夜漬けをするかもしれませんが。

2003,8 
←狩俣ぬイサミガ(その4)へ