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狩俣ぬイサミガ(宮古)その2   
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 歌詞に不安は残っているものの、とりあえず三線に移ります。
 工工四は、早弾きではありませんでした。この工工四の場合、3ページ目に『なますのぐう』があり、14ページには『なますのぐう(早弾き)』というのがあります。つまり、同じ曲の早弾き用とそうでないものと二つの工工四が書かれているのです。残念ながら、『狩俣ぬイサミガ』の早弾き工工四は掲載されていません。
 それでも、ほとんど困ることはありませんでした。宮古民謡は沖縄民謡に比べると「素直な」工工四が多いようです。早弾きも然り。メロディーを覚えていれば、ほぼ問題なく三線を合わせられると思います。しかも、早弾きではないにしろ、工工四が目の前にあるわけですから、何もないよりずっと楽です。

 まず、工工四をなぞってみます。「二揚」と書かれていますので、その通りに調弦をして歌を思い出しながら弾いてみます。2カ所気になるところを発見しました。
 一つは、歌い出しの「かズ」の音。〈合〉〈下老〉となっています(声楽譜も)。CDでは、三線も歌も〈乙〉〈下老〉の音に聞こえます。それほどきにしなくてよいのかもしれません。この工工四では、『とうがにあやぐ』の最初も〈合〉と書かれていました。とりあえず、三線は工工四通りに〈合〉を使って、歌はCD通りという形にしてみます。
 もう一つは、「かズまたぬいさみが」の「ぬ」と「い」の間の音が、三線も声楽譜も〈七〉になっていること。CDでは〈中〉に聞こえます。これは、どちらも〈中〉にしました。弾きやすいからです。

 CDに合わせて、三線を弾いてみます。そのためには調弦をCDに合わせなければなりません。國吉源次さんは、大変高い調弦で歌う人です。この曲は、「C♯」あたりでした。その二揚で、声は〈八〉まで出さなければなりません。歌うにはけっこうつらいものがありますが、CDに合わせて三線の練習をするだけなら、高さは問題ではありません。(後に歌も合わせるのですけれど)

 しばらく合わせてみて、やはり最初の〈合〉が気になってきます。CDは〈乙〉の音から始まっています。直すのなら早いうちがよい。と考え、〈乙〉を使って演奏してみました。やはり、この方がしっくりきます。
 さらに合わせていて、歌持から歌に繋がる部分の音が気になってきます。
〈中工五七五工上七四七四五乙下老〉
この〈乙〉から歌が始まるわけですが、その前の音が〈五〉なのです。見ただけではわかりにくいと思いますが、実際に弾いてみるとすぐにわかります。〈五〉〈乙〉という音の並びは、どちらも人差し指を使いますので、指の動きが忙しい。こういう動きは、あまりしないものなのです。〈乙〉の部分を〈合〉にしていたときは気にならなかったのですが。さて、また〈合〉に戻すか?CDを聞きながら考えます。やはりCDは〈乙〉の音を使っている。ここで思い出したのです。『漲水ぬクイチャー』のことを。
 『漲水ぬクイチャー』は「二揚」と書かれている工工四がありますが、実際には「三下げ」の方が演奏しやすいのです。この『狩俣ぬイサミガ』も「三下げ」にすれば、二揚の〈乙〉=三下げの〈合〉ということになりますので、指の問題も音の問題も解決です。
 「三下げ」でやってみます。
〈中工五七五工上七四七四五合老〉
うまくいきます。そうしてCDを聞いてみると、國吉源次さんも「三下げ」で演奏しているように思えてきました。

 三下げで演奏する決心をして、さあ、そろそろ歌ってみることにしましょう。

 え?(その1)の最後に書いた「先に進むのではなく後戻りするべきだった」の話ですか?それは、この次に出てきますので。

2003,8 
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