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ユナーは偉い | ||||||||||
ユナー。つまり、三線の与那城型のことです。これは、偉いです。どこが、どう偉いのか。 邦楽のお三味線には、男性向きと女性向きがあったそうです。 おそらく、現在はよほどの高級品でなければ注文生産のような形をとらないでしょうから、そういう区別をあまりしないのかもしれません。 男性用は、棹が太い。女性用は細い。と書いてしまえば、ああそうか。で終わりですけれど、もう少し深みのある話です。 邦楽の三味線には太棹、中棹、細棹という分類があります。ジャンル毎に使う棹が決まっています。では、どうして男性用と女性用があるのか。それは、例えば「中棹」ではあるけれど、女性にはやや細め。男性にはやや太め。という理解で正しいのでしょう。そして、なぜ男性の方が太いのかといえば、手の大きさや体力といったことが関係しているのだろうと想像できるわけです。 ある日。邦楽の三味線店で、店主からこんな話を聞いたのです。 話の発端は、「かんべり」でした。邦楽の三味線では、長年使用していると「かんべり直し」が必要になります。つまり、三味線の上場(うわば)=三線でいうところの「トゥーイ」が傷む(弦の跡がついたりする)ので、きれいに削り直す必要があるわけです。その「傷んだ上場」を「直す」ことを、「かんべり直し」と呼ぶのです。
かんべり直しは、棹を削る行為ですので、何度もやっていると棹が細くなってしまいます。自ずと限界があるわけです。そこで、男性は棹が減りやすい→太くしておいて、かんべりを直しても余裕がある。ということなのだと思ったのです。これは、半分しか正しくありませんでした。 「ということは、男性用の方が、棹の厚みがあったということですか?」 「いえ、そうじゃなくて、少し張りだしているという感じですねえ」 数分間、店主から説明を受けて、やっと意味がわかりました。 下の図は、棹の断面です。左が女性用、右が男性用。かんべりを直すと、棹の表面が削られて、赤い矢印へと上場(うわば)が下へ降りることになります。もっと使い込むと、さらに青い矢印にまで下がるわけです。(図は、説明のために誇張してあります)
この断面図、沖縄の三線の「真壁型」と「与那城型」に似ています。 「与那城型」は、糸巻きの位置を下にずらしてあるものが本来の形だと聞きます。トゥーイを削り直しても余裕があるようにです。さきほどのお三味線の「男性用」の話から、沖縄の「与那城型」は、糸巻きの位置だけでなく、棹の断面の形にも「トゥーイを直すときの余裕」が考慮されていたのだということがわかりました。 もう一つ気づくのは、「夫婦三線」の話です。邦楽の「男性用」と「女性用」を「与那城型」と「真壁型」に当てはめれば、夫婦三線として「与那城型」と「真壁型」がよく用いられているという話とも関係なくはないように思えてくるのです。 |
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左利き用の三線 | ||
○左利き用の三線がほしい ありますね。左利き用の三線。 左利き用、右利き用、と書くのが面倒なので、左三線と右三線でいきましょう。 実物を見たことがありますし、インターネットで販売されているのも見ました。 三線の形というのは、ほぼ左右対称ですよね。糸巻きの部分だけが違います。もし、右手で勘所を押さえるようにしたい。というだけでしたら、わざわざ左三線を買わなくても、右三線の弦の位置を入れ替えるだけで問題なく使えます。入れ替えは、女弦と男弦だけでいいんですよ。中弦はそのまま。
○右で弾くべきか、左で弾くべきか 実は、これが一番気になる部分だろうと思うわけです。 右利きの構えで弾く、左利きの構えで弾く、と書くのが面倒なので、右で弾く、左で弾く、とします。 (1)演奏できるようになりたい 三線の練習をして演奏できるようになりたい。という点では右で弾いても左で弾いても問題なさそうです。もともと高度なテクニックを必要としない楽器ですので、右用に書かれた教則本や工工四を見て左での弾き方を練習しても、問題なく練習できるでしょう。 たとえば、三線の前にギターなどの弦楽器を左で演奏していた人なら、三線も左で弾く方が早く上達するはずです。 他の楽器を左で弾いた経験のない人はどうすべきか。 ハサミや包丁は、片手で使う道具ですので、右用と左用の両方があるべきでしょうね。 三線などの楽器は、両手を使いますので、左利きの人でも最初から右で弾いていれば問題ないと思います。「いや、私は右で弾くことに違和感がある」とおっしゃるのでしたら、先ほど書きましたように左で練習しても問題はありません。 この項目では、「どちらでもよい」という結論です。 (2)教室に通いたい 教室に通っていて、しかも、その教室では発表会の計画がある。というのでしたら、私は右で弾くことを勧めます。 特に、琉球古典では合奏、あるいは斉唱と呼ばれる形態がありまして、舞台上に三線の演奏者がずらりと並ぶわけです。その時に、一人だけ逆に三線を構えていると調和がとれません。 などと書くと、左利きの人間を排除する気か!としかられそうですが、今のところはこのように書かせてください。といいますのも、独学で三線を練習している場合は、右でも左でも問題ないわけですが、「よし、いっちょう教室の門をたたいてみるか」と思ったとき、教室では左で弾くことを認めてもらえない可能性があります。 (3)個性を出したい 「左利きは、私の個性です。右で練習すれば右で弾ける。それは当然。でも、私は私らしく、左で演奏したいんです」 そういう考え、私はけっこう好きです。 これから先、左で弾く人が増えてくれば、舞台上で合奏するときに、右半分は右で弾いて、左半分は左で弾いているという形も現れるかもしれません。それもいいことだと思っています。古典の教室に通いながら左で弾き続けて、古典の世界に新風をというのもいいかもしれません。ただ、そうなる可能性が高いかと言われると、首を横に振ります。先に書きましたように、初めて触れる弦楽器が三線であれば、左利きでも右利きでも、右で弾いて不都合はないということから考えて、これから先、左で弾く人がそれほど増えてくるとは思えません。 民謡の世界ですと、自由度が高いです。その左弾きが舞台の上で個性を発揮し、新しいものを生み出す可能性もあります。私は応援したいです。 (4)ハンディキャップの話 左利きの人は、右で練習すれば右で弾ける。左で練習すれば左で弾ける。だったら、右でやってくれればいいじゃないの。問題ないんだから。 そういう考え方もありますよね。問題ないから左で弾くのよ、と言ってもよいし。 ところで、ピアノの場合は左用を使っていませんよね。 先に書いたように、三線は両手で演奏する楽器ですから、「右で演奏するために左を捨てる」というわけではない。それでも個性をという考えもある。結局その人の考え方次第なのです。しかし、どうしても他の人と違った形にならざるを得ない人たちもいます。 左利きの話からは外れてしまいます。 ハンディキャップがあって、片手が使えない人が、足で弦をはじいて演奏できるという話を聞きました。車イスを使っているために、舞台上で正座ができない人もいるでしょう。いろいろな事情で、他の人と同じ構え方ができない人がいると思います。そんな人たちも一緒に楽しめるようになるべきだというのは、右と左の話とはちょっと違いますが忘れてはいけないことだと思います。 追記 私は右利きです。私にわからないところに「左利きの人は、左で弾く方がいい」という理由があるかもしれません。お気づきの点などありましたら、ご連絡をお願いします。 |