○弾き語りに挑戦

  1. 声を出す
  2. 練習曲(チューリップ)
  3. 練習曲(新安里屋ユンタ)

☆これまでのまとめ

声を出す

 一番の難所です。でも、必ずできると信じて登りましょう。登りきると、目の前に新しい世界が広がりますよ。

1,声を出す

 タブ譜を演奏しながら、声を出してみます。

 「3,左右の調和」に載っていたタブ譜を見て「でたでた・・」とか「うみは・・」と歌いながら演奏しましょう。この二つは、三線と歌とがまったく同じ音、同じリズムです。これが三線の伴奏の基本です。

これまでの練習でも、心の中では歌っていたと思いますが、実際に声を出すことが大切です。「心の中で歌っていたから、大丈夫」などと考えないで、必ず声を出しながら演奏してください。確実にできるようになれば次へ。







練習曲(チューリップ)

 いよいよ、一曲完成させたいと思います。『チューリップ』で腕試し。できたら、『新安里屋ユンタ』へ進みましょう。歌を知らない場合は、CDなどで覚えてください。曲名に続いて(2A 3D 3A)等と書いています。歌の高さを考慮して、調弦の目安を表したものです。男性の場合は、(2A 3D 3A)なら(2B 3E 3B)程度まで上げてもよいと思います。ご自身の声の高さと合わない場合は、「○調弦をする」を参考にして、高さを調節してください。

(え?男性の方が声が低いのに?と疑問に思いましたか?それは正しいのですけれど、調弦は女性の方が低くした方がよいのです。詳しくは別項にて)

 まず、タブ譜を見て演奏してみましょう。リズムに気を付けます。歌を覚えていれば、リズムも大丈夫でしょう。三線ができてきたら、三線と歌を合わせて「弾き語り」です。








練習曲(新安里屋ユンタ)
『新安里屋ユンタ』(2A 3D 3A)

*解説

 「ユンタ」とは、八重山地方(石垣島とその近隣の島々)で歌い継がれている三線伴奏のない歌を指します。「こいなユンタ」「猫(まや)ユンタ」など、いろんなユンタがあります。

 宮良長包氏が、「安里屋ユンタ」を元にして「安里屋ユンタ」を作りました。と書きますと、どうもややこしいですね。それで、八重山地方では、元々の方を「安里屋ユンタ」、後の方を「新安里屋ユンタ」と区別することがあります。CDなどでよく聞く「安里屋ユンタ」は、「新」の方ですね。ここでも「新」の方を練習曲とします。

 元祖の方も、三線伴奏で歌われることもあります。更に、三線伴奏つきで歌うことを前提とした「安里屋節」というのもあります。というわけで、「安里屋ユンタ」の説明はたいへんややこしいのですが、どこかで「安里屋ユンタ」に出会ったときに、いろいろあるということを思い出してください。




*歌詞


@ サー 君は野中の いばらの花か 「サーユイユイ」 暮れて帰れば ヤレホニ引き止める 「マタハーリヌ」 チンダラ カヌシャマヨ
A サー うれしはずかし 浮き名をたてて 「サーユイユイ」 主は白百合 ヤレホニままならぬ 「マタハーリヌ」 チンダラ カヌシャマヨ
B サー 田草とるなら 十六夜月夜 「サーユイユイ」 二人で気兼ねも ヤレホニ水入らず 「マタハーリヌ」 チンダラ カヌシャマヨ
C サー 染めてあげましょ 紺地の小袖 「サーユイユイ」 かけておくれよ 情けのたすき 「マタハーリヌ」 チンダラ カヌシャマヨ




*演奏のポイント

一段目

《三線》

 「女弦3」が連続しています。間に「男弦0」が入っていますが、「女弦3」の小指は、離さずに押さえたままで。


二段目

《三線》

「中弦2」が二度出てきます。
 前出の一段目「女弦3」の連続では、小指を押さえたままで演奏できましたが、こちらの場合は押さえたままですと、指が女弦に触れていて「女弦0」の音が出なくなります。面倒でも、「女弦0」を鳴らすときには、一度中指を離しましょう。

《歌》

 「さ(男弦0)き(男弦0)み」といったように、「男弦0」が間に入ってきます。声がつられてしまうことはないでしょうけれど、弾き語りに慣れるまでは「さみは」というように、妙なアクセントがついてしまうかもしれません。聞き苦しい歌にならないように、なめらかに「さーきーみはのなかの」と歌いましょう。

 このように、「間に(男弦0)が入る」というような形は、他の曲でも見られます。慣れておくといいでしょう。また、このような音の使い方は、将来挑戦したい「早弾き」でもよく見られます。


三段目

《三線》

「女弦1」が二度出てきます。この場合は、人差し指を押さえたままでよいでしょう。このような判断は、特別な決まりがあるのではなく、「押さえたままで問題なければそのままでよい」とします。


《歌》

 カタカナの部分は、一番から四番まで同じ言葉が出てきます。これを「囃子(はやし)」と呼びます。その中で、「サーユイユイ」「マタハーリヌ」には「 」がつけてあります。この部分は「返し(かえし・けーし)」と呼ばれます。返しを他の人に歌ってもらう(返してもらう)と楽しいですね。もし、二人で演奏するなら、「一番は私が歌って、あなたが返し。二番はあなたが歌って、私が返し」と交互に歌っても楽しいでしょう。四段目の「マタハーリヌ」も同様です。


《間奏と終わり方》

 一番の「チンダラカヌシャマヨ」まで歌ったら、次は二番です。タブ譜の最初に戻って前奏(「歌持」=「うたむち」と呼ぶことが多い)部分を演奏して、二番に入るのが一般的な歌い方です。

一番長い間奏二番長い間奏三番長い間奏四番長い間奏(終わり)

でも、この曲は前奏部分が長いですね。そこで、一番が終わったら、タブ譜の最初まで戻らずに、「間奏を短くするとき」と書かれた所にジャンプして、前奏を切りつめてしまう方法もあります。歌の最後は、長い間奏を弾けばよいでしょう。

次のような、長短織り交ぜた形もおもしろいですね。

一番短い間奏二番長い間奏三番短い間奏四番長い間奏(終わり)







これまでのまとめ

確認

  1. タブ譜の見方がわかった
  2. 課題曲の三線演奏ができた
  3. 課題曲を演奏しながら歌えた

 ここまで、ずいぶんがんばってきました。一番苦労したのが「三線を弾きながら歌う」ことでしょう。最大の難関と言っても良いと思います。三線を演奏するというのは、三線を演奏しながら歌うことに他なりません。ですから、最大の難関であり、一つの「ゴール地点」とも言えるわけです。

 『チューリップ』は簡単にできたのに、『新安里屋ユンタ』は難しかったという人も多いでしょうね。
 『チューリップ』のように、歌と三線の音がまったく同じ場合ですと、簡単にできてしまいます。歌と三線が助け合ってくれて、とても楽に歌えます。ところが、『新安里屋ユンタ』のように、歌と三線のリズムや音が違う部分が出てくると困ります。なぜ困るのか。歌が三線に「つられる」わけです。

 「どうして、ここで違う音になるのよ!歌と同じでいいじゃないの!」と言いたくなることもあるでしょう。でも、練習を重ねると、リズムや音が違っている場合でも、歌と三線が助け合ってくれるようになります。そうなるまでには少々時間がかかりますが、これだけは信じてください。「いつまでも、辛いばかりではありません。三線と歌とがお互いに助け合い、絡み合い、美しい音楽になっている」そう感じるときが必ず来ます。

 そのためにも、みなさんに伝統的な音楽をお勧めしたい。