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家よーたか(八重山)      
 『南島歌謡大成八重山編』には、歌の分類に「ユンタ」「ジラバ」「アヨー」「ユングトゥ」と同列に「ヤータカビ」という項目があります。
 「ヤータカビ」には「家崇べ」という漢字を当てるようです。「崇べ」は祈りの言葉を意味するそうで、「ヤータカビ」は家を新築したときのお祝いで唱えられる歌を総称しているようです。

 コンパが盛り上がってきたところで、突然みんなが立ち上がって、一つの輪になって手をつなぎました。何が始まるのかと思って待ちかまえていると、先輩が太鼓を手に持って、歌い始めます。
「やーよーーたーーかーえーーひーやー・・・」
他の先輩も一緒になって歌います。歌いながら、その輪を縮めたり(みんなが輪の中心に向かって二歩進み、つないだ手を上に上げる)、また元に戻ったり(そのまま、二歩下がりつつ手を下げる)を繰り返すのです。そうしながら、輪は少しずつ左に回っていくのです。
この歌が「家(やー)よーたか」と呼ばれる小浜島で教えていただいた歌でした。先輩達にとっては、舞台で一度演じたことのある芸能なので、みんなで盛り上がっているわけですが、新人の私は、いったいなぜ立ち上がったのか、何を歌っているのか、なぜ輪になって「マイムマイム」のようなことをしているのか。わけもわからず、ただ、先輩達の嬉しそうな顔を見て「たぶん、なんだか喜ばしい歌と踊りなんだろうなあ」と思いながら懸命に真似をしていました。

「いち、に、○、いち、に、○・・・」

 足は、「いち、に」と進んだり戻ったりするのですが、その次の「○」で一拍休みがありますので、この歌は、三拍子なんです。
 初めてこの歌を聞いたときは、とっても驚きました。日本の民謡には、「何拍子」と割り切ることができないものが多いのです。あったとしても、2か4でしょう。ところが「家よーたか」は三拍子。きちんと最後まで三拍子です。国内で、三拍子の民謡はこの「家よーたか」と、続いて歌われる「松金ユンタ」だけかもしれません。

 ただし、西洋の「ワルツ」とは違った雰囲気をもっています。私の勝手な印象ですけれど、ワルツは「ドン、チャッ、チャッ」というふうに、最初の拍子が強く、あとの二つは流れるような感じですが、この「家よーたか」は、「ドン、ドン、チャッ」という感じ。最初の二つが強く、三つ目が軽い。
 だから、どうした?と言われると、何もないんですけど。ただ、こんなことに気づいたというだけのことでして。

 歌詞は、今日の日がすばらしい日であることや、この家は金(かに=金属)でできている丈夫な家であることなど、家を誉めて幸せな生活ができるように祈っています。
 「家造り」は、八重芸が何度か舞台で表現したことのある題材です。材木の切り出し、製材、地固め、そして、新築のお祝いと、歌や踊りの活躍する場面がたくさんあります。これらの芸能のいくつかは、今でも形を変えて八重山に残っているのでしょうね。

2003,8