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やぐじゃーま節(八重山)    
 「網張ぬみだがーまユンタ」もカニの歌ですが、あちらは、カニを人に見立てて、お祝いの役割を割り当てた滑稽な歌です。
 こちら「やぐじゃーま節」にも、カニが三線を弾いているように見えるという歌詞があるのですが、その後の歌詞を見ると「網張・・・」とはまったく違う世界です。簡単にまとめますと、

 ガサミ(カニの名)のような強い子を産みたい。若夏のころになると、漁火がやってくるのが気がかりで、人間によって大きなハサミが折られてしまう音が辛い。何を頼って身を守ればよいだろう。ヒルギ(マングローブ)を頼って、隠れよう。(「八重山古謡」を参考にしました)

 これは、農民が苦しい生活から逃れたいという願望を歌っていると考えられています。「網張・・・」とは逆に、人をカニに置き換えているわけです。

 以前から、「ガサミ」が気になっていました。おいしいから?違います。
 歌の中では「がさめなか子(ふぁ)ば」という言葉が使われています。「強い子」という意味らしいのです。
 竹富の童謡に こんなのがあります。五本の指の名前を呼びながらの遊び歌です。
ふーゆべま なかゆべま たかてーまーれま かんざせま がさめま あんまーかいおり
じょろじょろじょろ はい じょろじょろじょろ

 ふーゆべま=大きい指=親指
 なかゆべま=真ん中の指、指さしたりするときに使うからでしょう=人差し指
 たかてーまーれま=高い指=中指
 かんざせま=かんざしを挿すときの指=薬指
 がさめま=小指

 この「がさめま」がなぜ小指を表す言葉になるのかがわからなかったのです。

「八重山古謡」の『やぐじゃーま節』の解説に
・・・自分はあくまで弱者としてあきらめるが、その子にはガサミのような強い子「ガサミン子(グヮ)」を産みたいと希望して止まないのである。・・・
 という言葉が書かれています。

 もし、子どもを表す言葉に、「強い子ども」=「がさめ」というイメージが、八重山の人々の心の中にある、あるいはあったと考えるのなら、小指に「がさめま」という言葉がつくのも、歌の中に「がさめなか子」という歌詞が出てくるのも合点がいきます。今、私の心の中では、そういうことにしてあるのですが。

 農民の生活苦を感じさせる歌ですが、歌ってみると、軽快で楽しい歌です。