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鶴亀節(八重山)      
 とっても「日本的」な名前ですよね。そもそも「鶴」が沖縄や八重山にいるのか?まあ、鶴にもいろんな種類があるので、沖縄に飛んでくる鶴もいるかもしれませんけれど、八重山のある家の床の間に飾ってあった掛け軸の鶴は、たぶん「丹頂鶴」です。

 曲名からして、おめでたい。ですから、どこかで三線を弾くときは、必ずといってよいほど『鶴亀節』も歌いました。飲み会でも必ず。おめでたい歌というと、『赤馬節』『鷲ぬ鳥節』というのもありますが、こちら『鶴亀節』や『目出度節』の方が曲調が明るいですし、盛り上げるのには重宝したものです。

 『赤馬節』『鷲ぬ鳥節』『目出度節』には、振り付けがされています。八重芸も踊ります。しかし、『鶴亀節』は?八重芸では踊っていません。
 歌詞に『川平村(かびらむら)上(うい)なか・・・」とあります。踊りも川平にありました。
 『鶴亀節』の舞踊の写真を見たことはあります。4人で踊り、足の長い太鼓の台を舞台に置いて、片手で持てるくらいの太鼓を乗せてあったと思います。太鼓は2つだったと思うのですが。曖昧でもうしわけありません。

 夏。石垣島をレンタカーで走っていると、「パイン食べ放題」の看板が見つかりますよね。その日、四箇から川平方面へ走っている私たちの前に、その看板が。
 「すみませーん」
 車を停めて、店の中に向かって声をかけると、年配の女性の声で返事がありました。
 風のよく通る、庭先のような場所にしつらえられたテーブル。いわゆる「オープンカフェ調」のお店です。「パインの食べ放題」という言葉を、恥ずかしい気持ちを打ち消すように大きな声でお願いして、友人と話をしながら待つこと数分。お皿に盛られたパインをもって、先ほどの女性が現れました。
 「内地から?」
 「はい。大阪からです」
 パインをほおばりながらお話をしていますと、こちらの女性は川平のご出身だとか。
 「川平といえば、鶴亀節ですよね」
 この言葉を出せば、きっと顔を輝かせて川平の話をしてくださるかと思ったのですが、
 「そう。でも、踊りが苦手でね。お祭りで踊ったことがあるんだけど、一番前の席で親戚の子が見てて、あとから、おばさんへたくそだったーって。それ以来踊っていない。もう、ぜったい踊りはやらない」
 ある意味、川平の話で盛り上がりましたが。その女性は、よほどいやな思い出だったようです。が、しかめていた顔を元に戻して、パインのおかわりを取りに行ってくれました。
 踊りが好きでも嫌いでも、得意でも苦手でも、本人の意志に関係なく踊らされることもあるというのはわかりますが、そういう芸能が継承されている村に生まれたということは、とても幸せなことだなあと思ってしまうのは、芸能好きだからでしょうねえ。