とぅばいらーま(八重山) |
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題名をご覧になったかたは「『トゥバラーマ』の間違い?」と思っておられるでしょう。いいえ。『トゥバイラーマ』で正しいのです。八重山民謡の愛好家でも『トゥバイラーマ』を知っている人は少ないでしょう。
1980年だったと思います。西表島の芸能を教えていただこうと、八重芸の現役部員だった私たちは西表島西部の祖納、干立へ行きました。島の芸能に詳しいかたを尋ねて、いろいろなお話をうかがいました。そして、その日最後に訪問したのが干立に住んでおられた石垣金星さん(現在は祖納在住)のお宅でした。祖納の『仲良田節』と干立の『仲良田節』の違いについてのお話など、いろいろ勉強させていただきました。そのときに、この『トゥバイラーマ』も教えていただいたのです。
歌詞です。
干立ぬ トゥバイラーマ スリ たき原(ばる)ぬ 夫婦(みゆとぅ)石 ヒヨーイ スリ ユバナウレ
根動ぎしな トゥバイラーマ スリ 体動しな 夫婦石 ヒヨーイ スリ ユバナウレ
島とぅとぅみ トゥバイラーマ スリ ふんとぅとぅみ 夫婦石 ヒヨーイ スリ ユバナウレ |
(『西表民謡誌と工工四(石垣金星)』より |
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いわゆる琉歌体(8,8,8,6音)ではないことや、同じ意味を表す二つの言葉を並べている点、「ユバナウレ」といった言葉を繰り返すことなどを見ても、古い形の歌であることがわかります。もともとは、節歌(三線伴奏のついた歌)ではなかたったであろうと思わせる、素朴な形の歌です。
お祝いの席で歌われているそうです。
金星さんの歌を聴いて、私たちは宝物に出会えたような気になっていました。すばらしいのです。ゆったりとしたメロディーに素朴な味わい。私たちの知らない、こんな素晴らしい民謡があったんだ、と、みんな大感激したのです。友人などは、すぐにレパートリーの一つにしたほどです。
八重山民謡で有名な『トゥバラーマ』『小浜節』『与那国しょんかねー節』は、みんな高い音を使います。声の一番高いところは、三線の勘所でいえば〈九〉まで上がるのです。
『トゥバイラーマ』は、何と〈九〉のもう一つ上の音まで声を出さなければなりません。友人は、これを独唱曲にしようかと考えたのですが、あまりの高さに諦めました。「キーを落せば」と思われるでしょうけれど、当時の八重芸の独唱は、なぜか2〜3名が舞台に並び、一人が歌うときには、舞台上の他の歌い手も三線を一緒に演奏するという形でした。ウマが倒れるなどの不測の事態に対応できるという理由だったと思います。この場合、全員同じキーの三線を持って舞台に並んでいるわけです。一人だけ、声が出ないからキーを落すということは許されません。他の人もキーを落せばいいようなものですが、声の高い部分に合わせたくなるのが「八重山の歌い手」です。
ちなみに、現在の独唱は、一人一人が自分の好きなキーで歌っています。
2年ほど前だったと思います。大阪に石垣金星さんが来られて、小さなライブを開いたのです。私は、仕事の都合でライブの時間に間に合わなかったのですが、とにかく一目会ってご挨拶しようと、その会場へ向かいました。
到着したときには、ちょうど最後の挨拶をしておられました。
お客さんが帰った後、金星さんとお話をする時間をもつことができました。20年以上前にお会いしただけの私を覚えておられないはずですが、「八重芸のOBで・・・」と、お世話になったときの状況を説明すると、思い出していただけたようです。
『トゥバイラーマ』は金星さんのお宅で教えていただいたわけですが、お話をうかがっている間に夜も更けてしまい、私たちは夕食をご馳走になったうえ、宿泊までさせていただいたのです。突然訪問して、歌を習って食事に宿泊。今思えば、なんとずうずうしい。でも、ものは考えようで、そのずうずうしさのおかげで、20年以上すぎた今、こうして思い出していただけるのかも。
「あのう、お願いがあるんですけれど。『トゥバイラーマ』を教えていただいたのですが、長い間歌っていないので忘れてしまっているんです。もう一度聞かせていただけませんか?」
20年たっても、まだずうずうしいことを!などと叱られることはありませんでした。そのかわり、
「試しに、歌ってみて」
と言われてしまいました。
正直、歌持から思い出せません。歌は、一番だけ、なんとなく記憶しているのですけれど。とにかく、歌ってみました。
「ああ、二カ所違っているね。ここは・・・」
と歌ってくださったのです。感激です。あの、干立の思い出がよみがえります。
じゃあ、今は正しく歌えるだろう、ですって?
すみません。どこを直してもらったのか、思い出せなくなってしまいまして・・・・
2004,3 |
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